イランで、企業や個人による暗号資産の活用が広がっている。制裁の長期化で国際金融網から切り離される中、海外送金や決済、取引継続の手段として利用が浸透しているためだ。ただ、暗号資産だけで法制度や取引上の信頼まで補完するのは難しい。
ブロックチェーン系メディアのBeInCryptoが5日に報じた。石油は引き続きイラン財政の柱だが、暗号資産は日常の事業運営を支える決済手段として存在感を強めているという。
足元では中東情勢の緊張も高まっている。イランは4日、ホルムズ海峡近海で米海軍艦艇に向けてミサイルを発射したと主張した。
これに対し米国は発射を否定し、イラン側は警告射撃にとどまったと説明した。同じ時期に米国は、駆逐艦や航空機、ドローンに加え、約1万5000人の兵力を投入し、海峡の通航支援に向けた海軍作戦を開始した。
これを受けてブレント原油は1バレル=120ドル(約1万8000円)まで上昇し、ビットコインは8万ドル(約1200万円)台を回復した。
イランと中東情勢の専門家で、BRICS+コンソーシアムのビジネスカウンシルに所属するエブラヒム・メロ氏は、イランの国内外の取引は暗号資産抜きでは成り立ちにくくなっていると指摘した。
VisaとMastercardが利用できず、SWIFTへのアクセスも制限される中で、企業や個人がデジタル資産へ移行したという見方だ。
イランでは、銀行口座のイラン・リアルを暗号資産に換え、海外へ送る手法が使われている。資金はウォレット送金を通じて、ロシア、トルコ、アラブ諸国、北米へ移すことができるという。
一部の取引所の掲示板にはビットコイン価格が表示され、テヘランの一部高級レストランでは暗号資産決済も受け付けている。
採掘の拡大もこうした流れを後押しした。イランは石油・ガス資源を背景に電力料金が低く、ビットコイン1枚当たりの採掘コストは約1000〜1500ドル(約15万〜22万5000円)と推計された。
その結果、工場や学校、モスク、個人宅にまで採掘機器が広がった。一方で、採掘ブームは電力網の負担を高め、違法採掘の取り締まりには家庭や事業所、産業現場全般で限界があることも露呈した。
もっとも、暗号資産がイランの貿易上の問題をすべて解決するわけではない。イラン企業では依然として、口頭や非公式の合意、現金、見積書や請求書、ウォレット送金に依存するケースが多い。
こうした手法は、契約やラベリング規定、証明書、正式な銀行取引記録が重視されるロシアなどの市場では摩擦を生んでいる。
暗号資産は、公式の金融網が十分に機能しない環境で資金移動を支える役割を果たしている。ただ、法的枠組みや商慣行への理解、国境をまたぐ取引で求められる信頼まで代替するには至っていない。