AIの悪用リスクが強まるなか、サイバーセキュリティ関連株に資金が向かっている。The Informationによると、CrowdStrikeとPalo Alto Networksの株価は直近1カ月でそれぞれ約20%上昇した。一方で、予想売上高倍率は1年前とほぼ同水準にとどまっており、市場では成長期待をなお十分に織り込んでいないとの見方が出ている。
背景にあるのは、AIの普及に伴うセキュリティリスクの拡大だ。Anthropicの先端AIモデル「Mytos」がサイバー攻撃に悪用される可能性が指摘されており、企業の防御需要が一段と高まるとの観測が広がっている。
The Informationによれば、同期間にソフトウェア関連のIGV指数の上昇率は約10%にとどまった。サイバーセキュリティ銘柄の上昇が、ソフトウェア株全体を上回った格好だ。
それでもバリュエーション面では過熱感は限定的とみられている。CrowdStrikeの予想売上高倍率は来期予想売上高の約19倍、Palo Alto Networksは約11倍。いずれも1年前と同程度で、The Informationは、投資家がサイバーセキュリティ企業に固有の成長余地をまだ十分に評価していない可能性があると伝えた。
Anthropicは、サイバー攻撃への悪用を懸念し、Mytosの一般公開を見送っている。現在は一部の政府機関や企業に提供先を限定しており、「Project Glasswing」の下で複数のパートナーと連携しながら、Mytosを活用したソフトウェアセキュリティの強化に取り組んでいる。
Mytosの提供先には、CrowdStrikeやPalo Alto Networks、Zscalerなどのセキュリティ企業も含まれる。The Informationは、Mytosが今後より広く公開された場合、こうした企業は拡大するセキュリティ需要に対応しやすい立場にあると報じた。
KeyBanc Capital Marketsでサイバーセキュリティ分野を担当するアナリストのエリック・ヒース氏は、「この2年間は企業のサイバーセキュリティ支出が相対的に低調だったが、Mytosが示したリスクを受けて支出は増えるだろう」と指摘した。そのうえで、支出環境は従来より大きく改善するとの見方を示した。
一方で、AIモデル企業との競争を懸念する声もある。ただ、現時点では既存のセキュリティ企業が優位とみる分析が多い。
Citizens Bankのアナリスト、ルスタム・カンガ氏は、AnthropicやOpenAIのモデルは現状、脅威の識別はできても対応までは担えないと指摘する。その一方で既存のセキュリティ企業は、企業端末に導入済みのセンサーソフトウェアと、そこから蓄積した大規模な独自データを保有している。こうした基盤を踏まえると、AIモデル企業が直ちに代替するのは難しいとの見方を示した。