写真=左から、Samsung Electronicsメモリ開発担当のファン・サンジュン副社長、NVIDIAのジェンスン・フアンCEO、Samsung Electronicsファウンドリー事業部長のハン・ジンマン社長

Samsung Electronicsで、AI需要を背景に収益構造の変化が鮮明になってきた。これまで四半期ベースの過去最高業績を支えてきたHBMとDRAMに加え、NANDフラッシュとファウンドリーでも回復の兆しが出ている。NANDでは次世代SSDの投入を前倒しし、ファウンドリーでは2ナノでAI/HPC向け大口顧客との協業が具体化しつつある。

NAND市場では、NVIDIAが示した新たなストレージ構成が需要の見方を変えつつある。NVIDIAはGTCで、AI推論で生成されるデータをHBMだけで処理・保存するのではなく、Nandベースのストレージまで拡張するCMXのような構成を提案した。高価なHBMとDRAMに依存した構成では、コストと容量の両面で負担が大きくなるためだ。

こうした流れを受け、NAND事業にもAI需要の追い風が及び始めた。とくにTLCベースのPCIe Gen6 SSDなど、高性能ストレージ製品の需要拡大が見込まれている。

Samsung Electronicsは30日の1〜3月期決算説明会で、「Gen5に加え、Gen6ベースの超高性能NANDストレージソリューションの量産準備を完了した」と説明した。Gen6の初期サンプル評価では、主要顧客から性能面で前向きな反応を得たという。下期には、AIサーバーやデータセンター向けを中心に、Gen6 SSDの立ち上がり需要の取り込みを狙う。

QLC製品でもラインアップを広げる。Samsung Electronicsは3月、2Tb QLCの開発を完了した。これを基に、256TBのサーバー向けSSDなど超大容量製品を拡充し、需要対応力を高める方針だ。

第9世代V-NAND(V9)への移行も加速している。AIシステムでストレージの活用が広がるにつれ、HBM、DRAM、ストレージ間の性能差によるデータ移動の遅延を抑えたいというニーズが強まるとみているためだ。

NAND事業の回復は、メモリ事業全体の収益安定化にもつながる。これまでDRAMとHBMが市況回復をけん引する一方、NANDは価格低迷で採算面の重荷となってきた。AIインフラ向けのストレージ需要が本格化すれば、NANDがDRAMと並ぶ収益源に育つ可能性がある。

■ファウンドリーは2ナノ受注が具体化

ファウンドリー事業でも、受注環境に変化が出てきた。Samsung Electronicsは同日、「AI/HPC分野の大口顧客と2ナノでの協業協議を活発に進めており、一部顧客とは近く目に見える成果を期待している」と説明した。前四半期に比べ、受注進展への言及はより踏み込んだ内容となった。

背景には、メモリ供給が引き締まるなかで、メモリとファウンドリーを一体で確保したい顧客ニーズの高まりがあるという。

米テイラー工場の建設も進んでいる。第1工場は4月23日に装置搬入式を開いた。2026年の稼働を経て、2027年の量産開始後に2ナノの生産能力を段階的に拡大する計画だ。

第2工場については、グローバル顧客との受注協議と並行して、建設に向けた初期検討を進めている。米国内で先端プロセスの生産能力を確保することは、関税リスクへの対応という面でも意味を持つ。

用途の広がりも進む。4ナノプロセスのHBM4ベースダイは高い性能評価を受け、4ナノ需要を押し上げている。米州と中華圏の自動車・ロボティクス関連顧客とは、2ナノおよび4ナノの採用に向けた協議が進行中だ。

データセンター分野では、シリコンフォトニクス関連の需要も急増している。光通信モジュール大手とは、2026年下期から量産に向けた取り組みを始める。

一方で、レガシープロセスでは事業構成の見直しも進める。高付加価値のスペシャルティ需要に経営資源を集中する一方、競争力の低いプロセスは整理する方針だ。CISとDDIの製品群は27ナノへ生産能力を振り向け、8インチで量産しているPMIC、DDI、CISなどは順次ラインを閉鎖する。

NANDとファウンドリーが同時に持ち直せば、メモリ偏重の収益構造を和らげる効果も期待できる。Samsung Electronicsの1〜3月期の営業利益は、DRAMとHBMの価格上昇が主因だった。両製品の価格サイクルが反転する局面に備え、新たな収益源の確保が課題となるなか、NANDとファウンドリーの双方で進展が見え始めた意義は大きい。

もっとも、本格的な業績寄与にはなお時間を要する。ファウンドリーの2ナノ受注は現時点で「近く成果が見える」との説明にとどまり、NANDもGen6 SSDの売上寄与は下期以降となる見通しだ。2027年のテイラー工場量産開始が、非メモリ事業の反転に向けた一つの転機となりそうだ。

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