Samsung Electronicsは4月30日の2026年1〜3月期決算説明会で、HBM(高帯域幅メモリ)の2026年生産枠がすでに完売し、2027年分の需要についても前倒しで受注が入っていると明らかにした。2026年のHBM売上は前年比で3倍超に拡大する見通しで、成長の中心はHBM4になる。AI向け需要の拡大を背景に、需給逼迫は2027年まで続くとの見方も示した。
同社は、2027年の需要に対する供給不足は2026年よりも一段と深刻になると説明した。需要を満たす供給余力は過去最低水準にあり、在庫も極めてタイトだという。供給可能量が顧客需要に大きく届かない状況が続いており、例年とは異なり、供給不足を懸念する顧客から2027年分の需要が前倒しで入っているとした。
AIインフラ投資の拡大が、メモリ市場の需要構造そのものを大きく変えているとの認識も示した。
HBM売上は急拡大している。2026年通期のHBM売上は前年比で3倍超に増える見通しで、とりわけHBM4が成長を牽引する。
同社は2月、業界で初めてHBM4の量産出荷を開始した。HBM4の売上は2026年7〜9月期にHBM全体の半分を超え、通期でも過半を占める見込み。量産出荷の開始から本格的な立ち上がりまで約6カ月で、売上構成比が過半に達する計算になる。
HBM4について同社は、差別化した性能が需要集中につながっていると説明した。1ナノ世代の最先端プロセスを活用し、性能向上を実現したことが採用拡大につながったという。
顧客の採用が進んだことで、性能優位が価格プレミアムに結び付く構図も鮮明になった。同社は、確保していたHBMの生産枠はすべて埋まったと明らかにした。
次世代製品の準備も進めている。HBM4Eについては、ピン当たり16Gbpsの速度と4.0TB/sの帯域幅に対応する初回サンプルを、4〜6月期中に出荷する計画だ。
HBM4の量産で蓄積した1ナノ世代の技術力を基に、次世代製品の事業化準備を進めているとも説明した。市場では、HBM4Eの性能がSK hynix、Micronとの今後の競争を左右する要素になるとの見方が出ている。
需給逼迫が短期的な現象ではない点も、今回の説明会の焦点となった。同社は、新規ファブ増設に必要なリードタイムを踏まえると、当面は業界全体で供給拡大に制約が残ると見通している。
エージェンティックAIの普及でトークン処理量が急増し、メモリ需要は構造的に増える一方、供給能力の拡大には時間がかかるとの分析も示した。データ処理効率を高める新技術の導入によって、AIエコシステムはむしろ一段と速いペースで成長しているとも指摘した。
こうした市況の強さは、価格交渉のあり方にも影響している。HBMは、後工程の生産能力確保に時間を要することから、年単位で事前に価格交渉を進めるのが一般的で、四半期ごとに交渉する汎用DRAMとは異なる。
足元では汎用DRAM価格が急上昇し、一時的にHBMとの収益性が逆転する現象もみられた。ただ同社は、HBMの需給ギャップが拡大し続ける交渉環境を踏まえ、2027年にはその差が大きく縮小するとみている。
2026年4〜6月期のDRAMのビット成長率は、前四半期比で一桁台半ばの増加を見込む。供給余力が限られるなか、サーバー向けを中心とした製品構成を維持する方針だ。
NANDについては、前四半期の在庫水準低下に伴う供給制約の影響で、ビット成長率は前四半期比で一桁台前半の増加にとどまる見通しを示した。DRAMとNANDの双方で供給制約が同時に表面化する局面だとしている。
ファウンドリー事業との相乗効果も強まっている。4ナノプロセスで製造するHBM4のベースダイが高い評価を受け、4ナノ需要の押し上げにつながっているという。
メモリとファウンドリーを一体で確保したいという顧客需要も鮮明になっている。同社は、市場変化に対応するため、4ナノの供給拡大策を積極的に検討しているとした。HBMとファウンドリーを組み合わせた統合ソリューションが、新たな競争軸になりつつある。
その一方で、2027年以降の新規生産能力の立ち上げ時期は重要性を増している。同社が先行受注した2027年需要に対応するには、後工程ラインの増設が欠かせないためだ。
メモリ業界では、DRAMの生産能力を増やしても、HBM向け後工程のパッケージングライン確保には別途時間を要する。ただ同社は、生産能力増設の規模や時期に関する具体的な数値は示さなかった。
2027年まで需要の見通しが立っていることは、メモリ事業の収益変動を抑える効果にもつながりそうだ。過去のDRAM市場が半年単位の価格変動に左右されやすかったのに対し、HBMは年単位の先行契約によって収益構造が安定しやすい点がプラスに働くとしている。