イーロン・マスク氏とサム・アルトマン氏が、OpenAI設立直前に社名候補として「Freemind」を検討していたことが、法廷に提出された文書から明らかになった。開示されたメールには、Google DeepMindに対抗するAI組織を構想していたことや、AI安全性への問題意識もうかがえる。
Business Insiderが4月29日付で報じたところによると、2015年11月に両氏が交わしたメールが、マスク氏側の証拠資料として訴訟手続きで提出された。
開示されたメールの中で、マスク氏は社名候補として「Freemind」を有力案に挙げた。GoogleのAI研究組織であるDeepMindを意識し、それに対置する名称にしたいとの考えを示している。
メールでは、デジタル知能を一部企業が独占するのではなく、誰もが自由に利用できる形で提供したいという方向性も語られていた。マスク氏はDeepMindのアプローチについて、「一つの指輪ですべてを支配する」発想になぞらえたうえで、Freemindはその対極にある名前だと説明した。
これに対しアルトマン氏は、当初は即答を避けた。「Freemind」は「DeepMindに少し似すぎている」としつつ、「free」という言葉自体には前向きな印象を持っていると返信。別案として「Axon」も提示した。
ただ、マスク氏は「Axon」についても一定の評価を示しながら、Google Brainを連想させる可能性や、デジタル知能を人間の脳の模倣に矮小化して受け取られかねない点を懸念した。
そのうえでマスク氏は、「多くの名前は最初は良く見えないものだ」とし、「重要なのは、組織の使命と方向性をどれだけ適切に表せるかだ」と強調した。人材採用の面でも好印象を与える名称が望ましいとの考えも示した。
その後、アルトマン氏は別のメールで、「Freemind」に急速に気持ちが傾いていると伝えた。「明らかに正しい精神を表している」と評価し、計算機科学者アラン・チューリングにちなんだ名称もあわせて検討していると述べた。
一方、マスク氏はチューリング関連の名称には一定の理解を示しつつも、チューリングテストを直接想起させる方向性は避けたいとした。人間を置き換えるAI組織のような印象を与えかねないことを懸念したためだ。
これらのメールは、マスク氏がOpenAIとサム・アルトマン氏らを相手取って起こした訴訟の審理で開示されたもの。訴訟は、OpenAIが非営利研究機関から営利中心の体制へ移行した経緯を巡る民事訴訟で、4月28日にカリフォルニア州オークランドで弁論が始まった。
マスク氏は最初の証人として出廷し、29日まで証言を続けた。
裁判では、OpenAIの組織構造見直しの過程と、設立当初に掲げた目的が主要な争点となっている。今後も、設立時の文書や内部メールが重要な証拠となる見通しだ。
マスク氏は法廷で、OpenAI共同設立の経緯についてもあらためて説明した。「Googleに対するバランスを取ることが極めて重要だと考えた」と述べ、当時のGoogleはAIの安全性に十分な注意を払っていないように見えたと証言した。
今回開示されたメールは、OpenAI初期の命名検討が単なるブランド選定ではなく、Googleとは異なる理念と運営原則を持つAI組織を構想する議論と一体だったことを示している。
OpenAIは2015年12月、マスク氏やアルトマン氏ら複数の共同創業者によって、非営利のAI研究機関として設立された。