ビットコイン現物ETFへの資金流入が再び勢いを増している。21Sharesのアドリアン・フリッツ最高投資責任者(CIO)は、こうした流入基調が続けば、ビットコインは年末に10万ドルを試す可能性があるとの見方を示した。機関投資家の参入拡大に加え、市場の流動性改善も相場を支える要因として挙げた。
CoinDeskが29日(現地時間)に報じたところによると、フリッツ氏は年初以降、ビットコイン現物ETFに約20億ドル(約3000億円)が流入したと説明した。これは、伝統的な投資家の信認回復を映す動きだと位置づけている。
資金流入の担い手は個人投資家に限らない。機関投資家に加え、裁定取引やオプション戦略を手掛けるヘッジファンドも市場に参入している。Morgan Stanleyや大手資産運用会社の参入を背景に、機関マネーの流入ペースも加速しているという。
ビットコイン投資で長く課題とされてきた流動性への懸念も和らぎつつある。フリッツ氏は、ビットコインの日次売買代金が500億ドル(約7兆5000億円)を超え、NVIDIAのような大型テクノロジー株に匹敵する水準にあると指摘した。現物ETFの仕組みが発行市場と流通市場の双方で流動性を補完し、ビットコインを機関投資家が投資しやすい資産へと変えつつあると評価した。
こうした変化は、短期的な投機よりも構造的な需要拡大に近いとの見方が出ている。ポートフォリオマネジャーの間では、ボラティリティへの警戒感がなお残る一方、ビットコインを分散投資先の一つとして組み入れる動きが広がり始めた。ただ、市場参加者は引き続き、相関性やボラティリティ、マクロ経済への感応度を慎重に見極めている。フリッツ氏は、ETFの普及は一気に進んだのではなく、投資家教育やポートフォリオ内での役割理解が積み重なった結果だと述べた。
今後の価格動向は、ETFへの資金流入とマクロ環境の双方に左右される見通しだ。市場では、ビットコインが8万ドルを明確に上抜ける材料として、地政学リスクの緩和や継続的なETF流入に注目が集まっている。永久先物の資金調達率がマイナス圏にある局面では、上昇時にショートスクイーズが起きる可能性も指摘されている。フリッツ氏は、200日移動平均線が位置する8万5000ドル〜9万ドルを突破すれば、より強いトレンド転換のシグナルになり得るとみている。
マクロ指標も引き続き重要な焦点となる。投資家は、米個人消費支出(PCE)物価指数や米連邦準備制度理事会(Fed)の政策判断を通じて、今後の金融政策の方向性を見極めようとしている。
原油価格も無視できない変数だ。フリッツ氏は、原油が1バレル100ドル(約1万5000円)を超えれば、ビットコインを含むリスク資産の重荷になりかねないと警戒感を示した。短期的にはもみ合いが続く可能性があるものの、条件が整えば年末に向けて10万ドルを目指す展開もあり得るとしている。
一方、アルトコイン市場はビットコインとは異なる値動きとなる可能性が高いという。Ethereumは1〜3月期の不振を経て、ETFへの資金流入に持ち直しの兆しがみられるものの、市場全体の資金配分は変化している。フリッツ氏は、過去と同じ形での「アルトコインシーズン」が再来しない可能性があるとし、投資家の関心はファンダメンタルズ重視へとシフトしていると述べた。
実収益やキャッシュフローを伴うプロジェクトには、伝統的な投資家の関心が向かっている。フリッツ氏は、Hyperliquidのように実際の収益とキャッシュフローを備えるプロジェクトが注目されているとした。一方、ファンダメンタルズの弱いプロジェクトを裏付け資産とするアルトコインETFについては、上場維持が難しくなる可能性があるとの見方を示した。今後の暗号資産ETF市場では、ビットコインを中心とした機関投資家マネーの拡大とともに、個別プロジェクトのファンダメンタルズを見極める重要性が一段と高まりそうだ。