Qualcommの株価が29日の時間外取引で一時16%上昇した。四半期決算では次四半期の売上高見通しが市場予想を下回ったものの、経営陣が年内に大手ハイパースケーラー向けのデータセンター用チップ出荷を始める見通しを示し、材料視された。米CNBCが報じた。
同社は2Q決算で市場予想を上回る利益を確保した一方、3Qの売上高ガイダンスは市場の期待に届かなかった。このため株価は通常取引終了後に一時7%超下落したが、その後、クリスティアノ・アモンCEOの発言を受けて切り返した。
アモンCEOは決算発表後のカンファレンスコールで、今年中に「大手ハイパースケーラー」1社向けのデータセンター用チップ出荷を開始する見通しを明らかにした。顧客名は公表せず、詳細は6月の投資家向けイベントで示すとした。NVIDIAなどが先行するAIデータセンター向け半導体市場で、具体的な供給時期が示されたことで、投資家の期待が高まった。
業績面では強弱が分かれた。調整後1株利益は2.65ドルと、市場予想を0.09ドル上回った。売上高は106億ドルで市場予想と一致した。一方、3Qの売上高見通しは92億〜100億ドルとし、市場予想の101億9000万ドルを下回った。
もっとも、投資家の関心は足元の業績よりも今後の成長戦略に向かっている。Qualcommは昨年、データセンター向けチップを公開した。先週には、OpenAIとスマートフォン向けAIチップ開発で協力すると発表している。アモンCEOは決算説明の場で「AIエージェントの台頭が、当社の全プラットフォームのロードマップを見直す契機になっている」と述べ、全社戦略をAIシフトに合わせて進めていると説明した。
中国需要を巡る発言も投資家心理を支えた。アモンCEOは「今四半期が底になる」と述べ、顧客在庫の消化が進んでいるとの認識を示した。市場では、中国顧客の在庫調整が緩和局面に入る兆しと受け止められている。
Qualcommはスマートフォン向けのSnapdragonプロセッサや5Gモデムで知られる。PCや自動車向けへ事業領域を広げてきたが、売上高の多くはなおスマートフォン関連が占める。
アモンCEOは、こうした事業基盤によって最終市場の実需を比較的正確に把握できると強調した。スマートフォン市場の変化を早い段階で捉えやすい点を示した発言といえる。
ただ、スマートフォン市場を取り巻く環境はなお重い。IDCによると、世界のスマートフォン出荷は4%超減り、2023年半ば以降続いてきた回復基調が崩れた。こうした中、Qualcommはスマートフォン依存を抑えつつ、データセンターとオンデバイスAIへ成長軸を広げる構えだ。
今後の焦点は、6月の投資家向けイベントでデータセンター向けチップ事業の具体策と顧客像がどこまで示されるかにある。あわせて、中国での在庫調整が実際に収束へ向かい、スマートフォン関連売上高の持ち直しにつながるかも注目される。Qualcommは弱めの短期見通しを示す一方、AIインフラとデバイスAIの両面を狙う成長戦略で市場の視線をつなぎとめた。