欧州連合(EU)は23日、対ロシア第20次制裁パッケージを正式採択し、ロシア関連の暗号資産取引を全面的に禁止した。ロシア中央銀行が推進するデジタルルーブルに加え、ルーブル連動型ステーブルコイン「RUBx」も制裁対象に含めた。
ブロックチェーンメディアのCoinpostが28日付で伝えたところによると、今回の第20次制裁では、暗号資産分野が中核的な対象として位置付けられた。従来の制裁がエネルギーや金融、貿易に重点を置いていたのに対し、今回は暗号資産インフラにまで対象を広げた。
措置の柱は、ロシアを拠点とする暗号資産サービス提供者や分散型プラットフォームに対する包括的な禁止措置だ。暗号資産分析企業のChainalysisは、暗号資産が制裁の主要対象となる新たな局面に入ったとの見方を示した。
背景には、ロシアの決済構造の変化がある。ロシア政府は2022年のウクライナ侵攻後、西側の金融制裁への対応として、2024年に対外貿易での暗号資産決済を合法化した。EUはロシアが国際取引で暗号資産への依存を強めているとみて、今回の制裁で関連取引を大幅に制限した。
EUは、非認可のネットワークやセルフカストディ型ウォレットにとどまらず、ロシアが国際決済網の代替として構築してきた仕組みそのものを対象に加えた。Chainalysisは、デジタルルーブルとRUBxを制裁対象に加えたことについて、ロシアのSWIFT代替手段を明確に狙った措置だと指摘した。
同様の規制はベラルーシにも適用され、関連措置の期限は2027年2月28日まで延長された。
第三国の事業者に対する警告も鮮明になった。EUは、ロシア政府関連のステーブルコイン「A7A5」の取引に深く関与したとして、キルギスの取引所TengriCoinを制裁対象に追加した。TengriCoinは「Meer.kg」の名称でも事業を展開してきたという。
Chainalysisはこの措置について、第三国の暗号資産サービス提供者であっても、ロシア関連の暗号資産を扱えば制裁リスクに直面し得ることを示す事例だと評価した。
A7A5を巡る資金フローも、制裁強化の背景として挙がった。Chainalysisは、A7A5が制裁対象のロシア企業を国際金融システムにつなぐ専用的な仕組みとして機能していたと分析した。
累計処理額は1197億ドルに達し、このうち933億ドル超が直近1年で処理されたとして、足元で活動が急拡大していたと指摘した。
EUは決済インフラへの規制も強化した。ロシアのSWIFT代替とされる金融メッセージングネットワーク「SPFS」に接続するロシアの銀行20行に加え、第三国の金融機関・事業体4者を新たに取引禁止対象に加えた。
ロシア関連主体とのネッティング取引も禁止した。ネッティング取引は、債権・債務を総額ではなく差額のみで決済する方式で、ロシア関連取引では実際の取引相手を隠す手段として利用されてきたとの指摘がある。
今回の禁止措置は、ブロックチェーン取引で第三国を経由して資金を多層的に移動させる、いわゆるレイヤリング手法も直接の対象とした。Chainalysisは、暗号資産コンプライアンスの観点から特に重要な措置だとしている。
EUは、制裁回避に使われ得る金融インフラにも照準を合わせた。米国が2022年にサイバー犯罪活動への関与を理由に制裁したロシア関連取引所Garantexの後継とされるGrinexは、2026年4月にサイバー攻撃を受けた後、運営を停止したという。
一方、中国は直ちに反発した。中国商務部は、第20次制裁パッケージに中国企業と個人が含まれたことについて、「強い不満と断固たる反対」を表明した。
同部は、国連安全保障理事会の承認を経ない一方的な制裁であり、EUによるいわゆる「ロングアーム管轄」に当たると批判。関連する中国企業と個人を制裁対象リストから直ちに削除するよう求めた。
さらに、中国は今回の措置が中国・EU首脳間の共通認識にも反し、相互信頼と二国間関係の安定を著しく損なうと主張した。そのうえで、「必要な措置を講じて中国企業の正当な権益を守る」とし、その結果はEUが負うべきだと警告した。
今回のEU制裁は、ロシアによる暗号資産活用を封じるだけでなく、第三国の取引所や決済ネットワークを含む迂回ルート全体を締め付ける方向へと広がっている。