a16z cryptoは、ステーブルコインの主な用途が越境送金から国内決済へ移りつつあるとの分析を示した。2026年初時点で国内取引の比率は約75%に達し、実需ベースの取引規模も拡大しているという。
米ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)の暗号資産部門a16z cryptoで、ロバート・ハケット氏とジェレミー・チャン氏はこのほど、X(旧Twitter)で関連データを公表した。両氏は「ステーブルコインは中核的な金融インフラとして定着しつつある」と指摘している。
両氏によると、ステーブルコインは当初、取引所間で米ドルを移す手段として使われ、その後は価値保存の色彩が強かった。しかし足元では、決済インフラとしての役割が急速に高まっている。
背景の一つとして、規制整備の進展がある。米国ではGENIUS Actにより、ステーブルコイン発行を巡る初の連邦レベルの枠組みが整備された。投機的な取引や内部取引などを除いた実需ベースの取引規模は、2026年1〜3月期に約4兆5000億ドル(約675兆円)に達した。
欧州ではMiCAの施行が非ドル建てステーブルコイン市場の立ち上がりを後押しした。両氏は、MiCAが2024年末に本格施行された後、主要取引所によるUSDTの上場廃止をきっかけに、非ドル建てステーブルコインの取引量が一時400億ドル(約6兆円)を超えたと説明。その後は月間150億〜250億ドル(約2兆2500億〜3兆7500億円)で安定して推移しており、「これまで規制がほぼ存在しなかった市場が新たに形成された」としている。
取引構造にも変化が出ている。2025年は消費者間(C2C)取引が7億8950万件と依然として最大だが、消費者・企業間(C2B)取引は前年比128%増の2億8460万件に拡大した。ステーブルコイン連動カードプログラムの月間担保預託金も、2024年11月のほぼゼロから2026年初には月3億ドル(約450億円)を超えた。
両氏は、担保預託金そのものはステーブルコインの直接支出ではないとしつつも、ステーブルコインを基盤とする商取引が実際に増えている兆候だとみている。
既存の流通分が、より高頻度で決済や送金に使われる傾向も強まっている。発行量の伸びを取引需要が上回っているためだ。両氏によれば、2024年初に2.6倍だったステーブルコインの流通速度は、その後6倍に上昇した。これは新規発行以上のペースで利用が拡大していることを示し、価値保存手段から実需決済ネットワークへと性格が変わりつつあることを意味するという。
取引データから投資や取引所運営に伴う要素を除くと、2025年に実際の決済に使われた金額は3500億〜5500億ドル(約52兆5000億〜82兆5000億円)と推計される。取引金額ベースでは企業間(B2B)決済が最大だが、消費者間の直接決済や加盟店決済も急増している。
地域別では、アジアが全取引量の約3分の2を占めた。国別ではシンガポール、香港、日本の順。北米は約4分の1、欧州は13%程度だった。一方、中南米とアフリカは合計でも10億ドル(約1500億円)未満にとどまり、現時点では規模が小さい。
非ドル建てステーブルコインの広がりは欧州にとどまらない。両氏によると、ブラジル・レアル建てステーブルコイン「BRLA」の月間移転量は、2023年初のほぼゼロから2026年初には約4億ドル(約600億円)へ増加した。ブラジルのリアルタイム決済ネットワーク「PIX」との連携が普及を押し上げているという。
注目されるのは、ステーブルコインが越境送金よりも国内決済での利用を強めている点だ。国内取引の比率は、2024年初の約50%から2026年初には約75%へ上昇した。ブロックチェーンというグローバルな基盤の上で、各国のローカル決済手段として定着が進んでいる構図が浮かぶ。
両氏は「多くの人はステーブルコインが越境取引の手段になると予想していたが、実際にはよりローカル化が進んでいる」と指摘した。その上で、ドル建てが依然として主流である一方、ユーロ建てやレアル建てなど非ドル建ての領域も拡大しており、「四半期を追うごとに、ステーブルコインが汎用的な決済インフラへ発展している証拠が積み上がっている」としている。