Appleは9月1日付で、ティム・クック最高経営責任者(CEO)から、ハードウェアエンジニアリング担当のジョン・ターナス氏へ経営トップを交代する。焦点となるのは、新体制のもとでAppleの経営方針や製品戦略がどう変わるかだ。
22日、ITメディアのTechRadarによると、ターナス体制でもAppleの基本路線はおおむね維持される公算が大きい。一方で、ハードウェアとスマートホームの分野では、従来より踏み込んだ動きが出るとの見方もある。
ターナス氏はAppleに約25年間在籍し、現在はハードウェアエンジニアリング担当の上級副社長を務める。製品開発全般に深く関わってきた人物で、社内ではハードとソフトを一体で設計する従来の開発体制が、新経営陣のもとでも継続するとの見方が強い。
デザイン重視の姿勢も変わらない可能性が高い。Bloombergによれば、ターナス氏は社内会議で「引き続きデザインに集中する」「デザインはAppleの中核だ」と述べた。
同氏は現在、進行中の案件や重要課題を取締役会に直接説明する役割も担っている。このため、デザインを企業文化の中心に据えるAppleの姿勢が大きく揺らぐ可能性は低いとみられている。
製品哲学にも大きな転換は見えにくい。ターナス氏はこれまで、修理のしやすさよりも耐久性を優先すべきだというAppleの立場を繰り返し示してきた。
製品は長く使えることが重要であり、すべての部品を修理可能にすることに過度にこだわれば、かえって消費者や環境に不利益をもたらしかねないと説明している。その一方で、「製品を修理しやすくしたい」とも述べており、長寿命化の方針を維持しつつ、一部で改善を進める余地は残る。
クック体制で強化された個人情報保護とセキュリティの方針も継続する見通しだ。ターナス氏は従業員に対し、この分野の方針は変わらないと明らかにした。
環境方針も同様だ。Appleは包装材の削減や排出量の削減を進めており、2030年までに自社とサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成する目標を掲げている。
ターナス氏はこれに関連して、「絶対に変えてはならない、変わらないものがある」と述べ、その一つに環境保護への取り組みを挙げた。
一方、新CEO体制で存在感が増しそうな領域として、まずハードウェアが挙がる。オペレーションやサプライチェーン管理に強みを持つクック氏に対し、ターナス氏は代表的な製品開発責任者として知られる。
長年にわたりAppleのハードウェア部門を率いてきた経歴から、今後は物理製品の完成度や技術革新にこれまで以上に重点が置かれる可能性がある。とりわけVision Proのような製品は、その方向性を占う材料になりそうだ。
スマートホーム事業も注目分野だ。Appleは、ロボットアームを備えたスマートホームディスプレイを含む関連製品を準備しているとされる。
これらのプロジェクトはクック体制で始まったものの、ターナス氏のCEO就任によって開発や事業化のスピードが上がる可能性が指摘されている。大学時代に四肢麻痺患者向けの機械式補助アームを卒業研究として開発した経歴も、こうした見方を後押ししている。
総じてみれば、ターナス体制のAppleは、デザイン、統合設計、個人情報保護、環境方針といった同社の中核を守りながら、ハードウェアやスマートホームのような専門性の高い領域で独自色を強める方向に進む可能性が高い。