SK hynixのクァク・ノジョン社長(写真=SK hynix)

SK hynixは、長期供給契約(LTA)の見直しを検討している。顧客の関心が価格よりも供給確保へ移る中、契約の枠組みを改めることで、供給の安定と自社の収益基盤の安定化を同時に図る考えだ。23日に開いた2026年1〜3月期の決算説明会で明らかにした。

同社は説明会で、「新たな方式による構造的な代替案を検討している」と説明した。LTAの見直しは単なる営業施策にとどまらず、メモリ業界の収益構造や評価のあり方にも影響を与える可能性がある。

2026年1〜3月期の業績は、売上高が52兆5763億ウォン、営業利益が37兆6103億ウォンだった。四半期ベースで初めて売上高50兆ウォンを超えた。前年同期比では売上高が198%増、営業利益が405%増。営業利益は前四半期比でも約2倍に拡大し、純現金は35兆ウォンに達した。

キム・ウヒョンCFOは説明会で、「顧客は価格変動よりも供給不足リスクを重く見ており、中長期の供給量確保を求める声が強まっている」と述べた。そのうえで、「顧客には安定供給を、当社には安定した収益構造をもたらす新たな契約のあり方を検討している」と語った。

メモリ業界では、供給側が主導して契約条件の再設計を打ち出すのは異例とみられる。これまでのLTAは価格変動リスクへの対応という性格が強かったが、今後は供給量の優先確保を軸に契約が再構成される可能性がある。

背景には、構造的な需給の逼迫がある。SK hynixは、高帯域幅メモリ(HBM)、サーバー向けDRAM、企業向けSSD(eSSD)の供給不足が短期では解消しにくく、価格上昇局面も過去より長引くとみている。

同社はその要因として、市況悪化局面で各社が投資を抑制してきたことに加え、短期間での増産を難しくする増設余地の不足を挙げた。足元のスポット価格の軟化についても、「スポット市場は市場全体に占める比率が小さく、需給を代表するものではない」として、一時的な調整との見方を示した。

こうした需給認識を踏まえ、生産基盤への投資も前倒しする。SK hynixは、龍仁クラスター第1期ファブの稼働時期を2027年2月とし、従来計画より3カ月前倒しする方針だ。

清州M15Xの立ち上げに加え、龍仁クラスターのインフラ整備や極端紫外線(EUV)装置の確保が進むことから、2026年の投資額は前年を大きく上回る見通し。同社は「需要が供給能力を上回る環境では、供給能力の確保が中核的な競争力になる」と強調した。

HBMでは、第6世代製品のHBM4に向けた量産準備を本格化した。同社は「主要顧客と初期段階から緊密に協力している。下期にサンプル出荷を行い、2027年の量産を目標に準備を進めている」と説明した。今後3年間にわたり、顧客需要は自社の供給能力を大きく上回るとの見通しも示した。

競合各社の増設による供給過剰懸念については、「需要の可視性を踏まえた投資が原則だ」とし、過去のような無秩序な増設に陥る可能性は小さいとの見方を示した。

HBM4E(第7世代)の差別化策としては、ベースダイの最適化と1cナノ工程の適用を挙げた。1c工程はすでに成熟段階に入り、量産能力も確保したとしている。

NAND事業でも、こうした方向性を鮮明にした。ソン・チャンソクNANDマーケティング担当は、「NANDはもはや単なる保存装置ではなく、計算効率を左右する中核部品だ」と述べたうえで、「年末までに国内生産量の50%以上を321層品へ切り替え、生産性を最大化する」と明らかにした。

人工知能(AI)データセンターやAI PC向けストレージ市場では、Solidigmとのシナジーを生かし、高性能eSSDで競争力を高める戦略を進める。あわせて、電荷トラップフラッシュ(CTF)ベースの321層QLC技術を適用したcSSD「PQC21」の供給も始めた。

次世代製品の展開も進める。10ナノ級第6世代(1c)工程を適用したLPDDR6と192GB SOCAMM2は今月、量産を開始した。CXL 3.0ベースの第2世代製品でも、新市場で主導権の確保を狙う。

NAND分野では、3D積層技術であるHDF(高帯域幅フラッシュ)のグローバル標準化を主導する方針も示した。eSSDの全領域で、高性能TLC(トリプルレベルセル)から大容量QLC(クアドラプルレベルセル)までそろえ、AI需要の取り込みを図る。

LTA見直しが具体化すれば、メモリ業界のバリュエーションにも変化を及ぼす可能性がある。SK hynixは3月24日、米証券取引委員会(SEC)にADR上場に向けた非公開の登録申請書を提出しており、年内の上場を目指している。

契約構造の見直しによって業績変動を抑える取り組みがADR上場と重なれば、これまでメモリ企業に付きまとってきたシクリカルディスカウントの一部が和らぐとの見方もある。市況変動による業績の見通しにくさは、世界のメモリ企業の株価評価を押し下げる要因とされてきた。

LTA再編の詳細はまだ明らかになっていない。ただ、同社は年内に株主還元の拡充策も示す方針で、配当や自社株買い、消却などが今後の検討対象になる見通しだ。

SK hynix関係者は、「中長期の需要成長を先取りできるよう、生産基盤を戦略的に拡充していく」としたうえで、「需要の可視性を踏まえた投資により、供給の安定と財務の健全性を両立させる」と述べた。

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