米議会で審議が進む暗号資産法案「CLARITY法案」を巡り、ステーブルコインの利息規制に加えて、少なくとも5つの懸案が審議の足かせになり得るとの見方が浮上している。TD Cowenは、規制当局の人事空白、予測市場規制を盛り込む動き、トランプ氏の家族と関係があるとされるプロジェクトを巡る論争、マネーロンダリング対策(AML)強化への圧力、クレジットカード競争法との連動可能性を主な要因に挙げた。
4月22日付のThe Block Cryptoによると、TD Cowenのワシントン・リサーチ・グループでマネージングディレクターを務めるジャレット・セイバーグ氏は、まず商品先物取引委員会(CFTC)の体制不備を問題視した。現在のCFTCは、マイケル・セリック委員長1人の体制で運営されており、暗号資産法制でCFTCの監督権限を広げるにはハードルがあるとみている。
セイバーグ氏は、この問題自体は解決可能としながらも、追加委員の指名と承認には数カ月かかる可能性があると指摘した。議会が8月の休会に入る前、7月末までの法案処理を目指すのであれば、今後4〜6週間以内に関連手続きを始める必要があるとの見方も示した。
予測市場の規制を法案に盛り込もうとする動きも、審議を重くする材料とされる。論点はスポーツ賭博にとどまらず、インサイダー取引への懸念や、ドナルド・トランプ米大統領の家族を巡る利益相反問題にも広がる可能性があるという。
セイバーグ氏は、予測市場に関する修正案が提出されるだけでも、民主党が法案支持を撤回する可能性があるとみている。
トランプ氏の家族と関係があるとされるWorld Liberty Financial(WLFI)の暗号資産プロジェクトも、別の懸案として挙がった。初期投資家がトランプ大統領の任期終了前にトークンを売却できないという制限が改めて注目されており、これが民主党の支持を得にくくする可能性があるという。
さらに、イランがホルムズ海峡を通過する船舶から暗号資産で通行料を受け取る案を協議したとされる点も、AMLや銀行秘密法関連の規定に対する関心を強める要因として言及された。セイバーグ氏は、民主党がこれに対応する修正案を提出する可能性があるとみている。業界側が法案を頓挫させかねない条項と受け止めたとしても、政治的には阻止しにくいとの見方だ。
クレジットカード競争法との連動も、別の変数とされた。セイバーグ氏は、ディック・ダービン氏とロジャー・マーシャル氏の両上院議員が、この法案をCLARITY法案に組み込もうとする可能性があると予想した。
もっとも、この法案が実際に盛り込まれた場合、かえってCLARITY法案全体が頓挫する恐れがあるとも指摘した。
主要論点とされてきたステーブルコインの利息規制も、なお決着していない。トム・ティリス上院議員はPoliticoのインタビューで、上院銀行委員会が少なくとも5月までにCLARITY法案の採決に進まない可能性が高いと述べたうえで、折衷案の文言は委員会審査の直前に公表されるとの見通しを示した。
現在協議されている折衷案では、プラットフォームが自社サービスに預けられたステーブルコインに利息を付与することを禁止する一方、決済利用に伴う報酬は認める方向とされる。ただ、ティリス氏は、文言は意見集約の過程で変わる可能性があるとしている。
銀行業界と暗号資産業界の立場も、なお折り合っていない。事情に詳しい関係者は、暗号資産業界は数カ月にわたり誠実に交渉してきた一方、銀行側は立法を遅らせるか阻止しようとしているように見えると語った。
その関係者は、まずは委員会審査を通過させ、法案を議会手続きに進めることが重要だと述べた。
一方で、今回の遅れを直ちに法案頓挫の兆候とみる必要はないとの見方もある。セイバーグ氏は別のメモで、今回の日程の遅れは異例ではなく、「ワシントンではよくある進み方にすぎない」と記した。
ただし、法案成立にはトランプ大統領の直接的な関与に加え、上院で60票を確保できる超党派の折衷が必要だとの見方を示した。「容易ではないが、不可能ではない」として、成立の可能性を完全には否定しなかった。
市場関係者の見方は分かれている。セイバーグ氏は先月、年内成立の確率を3分の1程度と見積もり、障害が解消されなければ審議は2027年にずれ込み、最終規則の施行も2029年まで遅れる可能性があると警告していた。
これに対し、Galaxy Digitalは年内成立の確率を五分五分程度とみている。不確実性は特定の単一論点にあるのではなく、限られた時間の中で順に解決しなければならない未処理の課題が多いことにあると説明した。
今回の論点は、ステーブルコインの利息規制だけでは捉えきれない。監督当局の空白、政治的な利益相反を巡る論争、他法案との連動の可能性が重なり、暗号資産法制が技術や市場ルールの整備にとどまらず、政治・制度面の調整にも左右される局面に入っていることを示している。