SpaceXが6月末のIPOを前に、ウォール街の投資家に向けた非公開説明会を始めた。テキサス州の発射拠点「Starbase」やテネシー州メンフィスのデータセンターを公開し、宇宙事業に加えて衛星通信やAIインフラを含む事業の全体像を示すことで、上場前の評価形成を進める狙いとみられる。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanが21日(現地時間)に報じたところによると、SpaceXは最近、テキサス州とテネシー州で3日間の日程による説明会を開催した。事業構造の説明に加え、主要施設を投資家に直接公開したという。
テキサス州ボカチカのStarbaseでは、ブリーフィングと現地ツアーを実施した。大型ミューチュアルファンドや年金基金などの機関投資家を別途招く計画もあるとされる。
続いて、テネシー州メンフィスのデータセンターを公開し、AI拡張戦略と「Macrohard」プロジェクトについて説明するという。
今回のIPOでは約750億ドルの調達を目指すと伝えられている。目標とする企業価値は1兆7500億ドルに達する。
SpaceXは、ロケット打ち上げにとどまらず、衛星インターネットやAIインフラまで手掛ける「宇宙・データ企業」としての姿を投資家に訴求する構えだ。
焦点の1つがガバナンスだ。イーロン・マスク氏は昨年、元従業員と現職従業員から約14億ドル相当のSpaceX株を追加取得したとされる。
この取引は信託を通じて実施され、IPO目論見書の草案にも反映されたという。上場直前の段階で、マスク氏が持ち株比率を高めた形となる。
さらにSpaceXは、マスク氏に最大6000万株の追加株式を付与できる報酬制度も承認した。条件は、企業価値を最大6兆6000億ドルまで引き上げることと、AIデータセンターの構築目標を達成することだ。
この制度では、企業価値の上昇に応じて株式の権利が段階的に確定する仕組みを採る。また、一部の内部関係者には、一般投資家より強い議決権を持つ超議決権株が付与される見通しだ。
業績面では、衛星インターネット事業のStarlinkが収益の柱となっている。Starlinkは昨年、44億ドルを超える営業利益を計上した。一方で、AI投資の拡大が重荷となり、連結ベースでは赤字が続いた。
SpaceXとAI事業部門xAIを合算した会社の2025年業績は、売上高が186億ドル、純損失が49億ドルだった。
赤字の背景には積極投資の拡大がある。直近2年間で設備投資を大幅に増やし、昨年だけで200億ドル超を投じた。このうち半分超をAI分野に充てたとされる。
AI関連支出は前年の2倍以上に増えたという。
もっとも、財務余力はなお維持している。2025年末時点で、SpaceXとxAIの現金保有額は約248億ドル、総資産は920億ドル、総負債は508億ドルとされる。
一方、上場審査では、Starlinkの継続的な収益性、大規模なAI投資の負担、マスク氏に集中したガバナンスが主要な検証対象になる見通しだ。
市場では今回のIPOについて、単なる宇宙企業の上場にとどまらず、衛星インターネットとAIインフラを組み合わせた新たな企業モデルの評価を問う局面になるとの見方が出ている。