AppleのTim Cook最高経営責任者(CEO)が9月1日付で退任し、後任にはハードウェアエンジニアリング担当上級副社長のJohn Ternus氏が就任する。Cook氏は2011年から約15年にわたり同社を率い、時価総額を4兆ドル規模へ押し上げたほか、サービス事業の拡大も主導した。一方で、AI分野では課題を残した。米TechCrunchが21日に報じた。
Cook氏は2011年、スティーブ・ジョブズ氏の後任としてCEOに就任した。当時3500億ドル未満だったAppleの時価総額は、その後拡大を続け、2018年に1兆ドル、2020年に2兆ドル、2022年に3兆ドル、2025年に4兆ドルを突破した。現在の時価総額は4兆10億ドルという。
業績面でも成長が続いた。2025年9月期の純利益は1120億ドルとなり、2010年9月期比で8倍に増えた。
製品戦略では、iPhoneとMac中心だった事業領域をウェアラブルや周辺機器へ広げた。Appleは2015年にApple Watchを投入し、その後、血中酸素測定や心電図モニタリング機能を追加した。
2016年にはAirPodsを発売し、ワイヤレスイヤホン市場をけん引した。2020年には初のオーバーイヤー型ヘッドホンも投入した。2024年に公開したApple Vision Proは空間コンピューティング製品として打ち出したが、数千ドルに上る価格もあって消費者への浸透は限定的だった。
iPhoneとiPadのラインアップも広げた。iPhone SEを追加したほか、Face IDやエッジトゥエッジディスプレイを導入した。
iPadはサイズや価格帯の選択肢を増やし、個人向けに加えて業務・教育用途にも利用範囲を広げた。Macでは2020年にIntel製プロセッサからAppleシリコンへの移行を開始し、2023年には全製品群に展開。駆動時間や性能、電力効率を高めた。
サービス事業の拡大もCook体制の大きな成果だ。Apple Payは2014年の開始後、利用者が世界で8億1800万人に達した。
Apple Musicは2015年の開始以来、加入者数が1億1200万人を超えた。2019年に始まったApple TVは、アカデミー作品賞を含む数百の賞を受賞したという。
同年に投入したApple Arcadeはプレミアムゲームのラインアップ拡充につながった。iCloudも2021年のiCloud+投入を経てサービスを拡大した。一方で、App Storeは30%の手数料方針を維持した。
Appleのサービス部門の売上高は2025年9月期に1091億6000万ドルとなった。年間売上高4161億6000万ドルの大きな柱を占めている。
ただ、AI分野では決定打を欠いた。Appleは2024年にApple Intelligenceを投入したが、AIを活用したSiriの刷新は遅れている。
今年初めには、GoogleのGeminiがAppleの次世代AI機能を支援する方向が決まった。
Cook氏の15年間で、Appleはハードウェア企業の枠を超え、サービス、自社チップ、ウェアラブルへと事業の軸足を広げた。ただ、成長分野とされるAIでは期待されたほどのスピードを示せていない。次の競争力をTernus体制でどう立て直すかが焦点となる。