中国IT業界で、社員に自らの業務手順や判断基準を文書化し、AIエージェントに引き継げる形にするよう求める企業が増えている。業務効率化の一環とする見方がある一方、現場では雇用不安や業務のデータ化に対する警戒感も広がっている。
MITテクノロジーレビューが20日(現地時間)=4月20日に報じたところによると、一部企業では社員に対し、業務手順や意思決定の方法を文書化し、AIで扱える形に落とし込むよう求める動きが出ている。
議論の中心となっているのが、GitHub上で公開されたプロジェクト「Colleague Skill」だ。特定の同僚の仕事の進め方や思考パターンを抽出し、AIエージェントとして再現できるとうたっている。
開発者のジョウ・ティエンイーは、上海人工知能研究所のエンジニア。同プロジェクトについて、もともとは風刺として始めたものだと説明している。背景には、AI導入の拡大に伴って解雇への不安が強まるなか、企業が社員に「自らの自動化」を求める流れがあるという。
ツールの仕組みも象徴的だ。再現したい同僚を指定すると、中国企業向けの協業アプリ「Lark」や「DingTalk」のチャット履歴やファイルを読み込み、その人物の業務マニュアルや人物像まで整理するという。
単なる作業手順の再現にとどまらず、話し方や反応の傾向まで反映するとされる。上海の技術系会社員は、「元同僚を再現してみたが、驚くほどよく似ていた。コードのデバッグまで助けてくれたが、同時に背筋が寒くなる感覚もあった」と語った。
現場関係者によると、中国では「OpenClaw」が話題となった後、経営陣が社員にAIエージェントの実験を進める空気が強まったという。AIエージェントは、PC操作やニュースの読解・要約、メール返信、予約処理などに対応できるが、実際の企業利用にはなお制約も多い。
そのため企業側は、AIエージェントの活用を広げる前提として、社員に細かな業務内容の文書化を求めているとされる。専門家は、こうした取り組みによって企業は業務データや意思決定パターンを蓄積できるほか、どの業務を自動化できるか見極める材料にもなるとみている。
一方で、現場の受け止めは割れている。業務が細かく分解・記録されることで、自分の仕事が代替可能と判断されやすくなるのではないかと不安視するエンジニアもいる。反対に、AIが人間を完全に代替するにはなお技術的な限界が大きいとの見方もある。
こうした動きに対抗する、いわゆる「反蒸留」ツールも登場した。中国のあるAIプロダクトマネージャーが公開したもので、業務文書を意図的に曖昧にし、AI学習の有効性を下げる手法だという。関連動画はSNSで数百万件の反応を集め、話題を呼んだ。
AI導入が加速するなか、中国IT業界では、業務効率化と個人の働き方のデータ化の境界が新たな争点になっている。