中国のAI企業が、オープンなモデル公開を軸に開発者コミュニティーを広げている。MIT Technology Reviewは21日(現地時間)、米国企業がAPI中心の非公開戦略を維持する一方で、中国勢はダウンロードして自社環境で実行・改変できるモデルを投入し、存在感を高めていると報じた。
転機となったのは、2025年1月にDeepSeekが公開した推論モデル「R1」だ。R1は、米国の最先端モデルに匹敵する性能をより低コストで実現したとされ、中国と米国のAI研究の差を縮める契機となった。開発者の支持を集めた点も大きい。
その後は、Z.ai、Moonshot、AlibabaのQwen、MiniMaxなどが同様の戦略を採用した。各社は高性能モデルを相次いで投入し、米国勢を追い上げている。AI業界の関心が試験導入から本格運用・統合へ移る中、低コストでカスタマイズしやすいツールの優位性も増している。
データにもその変化が表れている。Hugging Faceの研究チームによると、2025年8月までの1年間で、世界のAIモデルのダウンロードに占める中国発のオープンウェイトモデルの比率は17.1%だった。米国の15.86%をわずかに上回り、この指標で中国が米国を上回ったのは初めてという。先月のHugging Faceのデータでは、AlibabaのモデルとQwen系で、ユーザーが作成した派生モデルの数がGoogleとMetaの合計を上回った。
一方、課題も残る。中国のモデルは国内のコンテンツ検閲体制の影響を受けており、政府方針に反する出力を避けるよう学習されている。Anthropicは2月、一部の中国研究機関がClaudeの性能を蒸留によって不正に抽出したと主張した。蒸留は、あるモデルの出力を別のモデルの学習に活用する手法を指す。
こうした西側の反発とは別に、グローバルサウスでは中国モデルの採用が広がっている。シンガポールの政府支援プログラム「AI Singapore」は、最新の地域モデル構築の基盤としてMetaのLlamaではなくAlibabaのQwenを選んだ。マレーシアは昨年、DeepSeekを基盤に自国のAIエコシステムを運用する方針を明らかにした。ナイロビ、サンパウロ、サンフランシスコの起業家も、中国モデル上でサービスを構築している。
米国企業は、巨額の学習コストの回収やモデル悪用への懸念を理由に、非公開戦略を維持している。これに対し中国企業は、米国の輸出規制で最先端チップの確保に制約を受けるなか、モデル公開を通じて外部のフィードバックや改善を迅速に取り込んでいる。オープンソースモデルは、人工知能の将来の多極化をシリコンバレーの想定以上のスピードで押し進めつつある。