AIエージェントの普及を背景に、企業向けソフトウェア市場で料金体系の見直しが進んでいる。使った分だけ支払う従量課金に加え、AIが実際に生み出した成果に応じて料金を設定する「成果連動課金」を採用する動きが広がってきた。
従来のソフトウェアは、1ユーザー当たりの月額料金を課すサブスクリプション型が主流だった。ただ、AIエージェントが業務を代行する局面では、このモデルが必ずしも適さないとの見方が強まっている。足元では、利用量ベースの課金にも限界があるとして、成果ベースに軸足を移すベンダーが増えている。
こうした流れはスタートアップにとどまらない。大手ソフトウェアベンダーでも、成果連動型の価格モデルを打ち出す動きが目立ち始めた。Adobeは、AIツールの利用量ではなく、実際の成果に基づいて課金する仕組みへの転換を進める。
The Informationによると、Adobeのアニル・チャクラバティ社長は、今週公開したAIエージェントプラットフォーム「CX Enterprise」に成果連動課金を導入すると明らかにした。
CX Enterpriseには、企業のデジタルマーケティング業務を自動化するAIエージェント群が含まれる。「Adobe CX Enterprise Coworker」は複数のAIエージェントを統括し、関連する業務データを集約して、マーケティング施策の立案や実行につなげるという。
例えば、フランス南部でホテル予約が伸び悩んでいる要因について、AdobeのアプリやAWSのデータベースなど外部ソフトウェアのデータを横断的に統合し、分析できるとしている。チャクラバティ氏は、利用効率が低い顧客ほど費用負担が膨らみやすい点を問題視し、「AIベンダーは顧客価値に結び付かないままコストを転嫁している」と指摘した。
Adobeは成果連動課金の詳細を公表していない。ただ、The Informationはその一例として、旅行・宿泊事業者向けに、AIエージェントが完了した広告キャンペーン件数に応じて課金する方式が示されたと報じた。
もっとも、Adobeが利用量ベースの課金を全面的に廃止するわけではない。写真・動画編集など既存のAIツールには成果連動課金を適用せず、一部では引き続きサブスクリプションや従量課金を維持する方針という。
成果連動課金を導入する企業向けソフトウェアベンダーは、Adobe以外にもすでに複数ある。
カスタマーサービス自動化を手掛けるZendeskとIntercomは、数年前から先行して成果連動型の料金体系を採用してきた。AIベースのカスタマーサービススタートアップであるSierra AIも、AIエージェントが実際に完了した作業件数に応じて課金している。
The Informationによると、Salesforceも今年2月、トークン処理量ではなく、エージェントが完了した作業件数を測る新指標「Agentic Work Unit」を導入した。
CRMベンダーのHubSpotも、AIエージェント「Breeze Customer Agent」と「Breeze Prospecting Agent」の料金方針を、利用量ではなく成果基準へと切り替えた。いずれも、担当する業務を完了した場合にのみ費用が発生する。HubSpotは、従来のAI市場で一般的だった座席単位(per-seat)や対話単位(per-interaction)の課金から離れ、結果に直接コストをひも付けるモデルを打ち出した。
HubSpotは、これまで成果連動課金の導入が難しかった理由として、多くのAIシステムが結果を安定的に保証できるほど一貫性を備えていなかった点を挙げた。その上で、スマートCRMにエージェントを組み込み、顧客データや関係履歴、業務コンテキストにアクセスできるようにすることで、より予測可能な成果を出せると説明している。