ServiceNowのビル・マクダーモットCEOは、企業が大規模言語モデル(LLM)に注目する一方で、実際の事業価値を生むのはモデルそのものではなく、業務を実行に移すワークフローだとの考えを示した。LLMだけで既存の企業向けソフトウェア基盤を代替しようとすれば、GPU投資やトークン費用が重くなり、コストは従来の10倍超に達する可能性があると警鐘を鳴らした。
マクダーモット氏はこのほど、ポッドキャスト「no priors」に出演し、企業の間で取り沙汰される「SaaSアポカリプス」に反論した。「単に言語モデルで既存のエンタープライズプラットフォームを複製しようとすれば、GPUファクトリーの構築やトークン費用がかさみ、既存プラットフォームを使うより10倍以上のコストがかかる」と述べた。
同氏は、AIとワークフロープラットフォームは役割が異なると説明した。AIは考え、ワークフロープラットフォームは実行を担うという位置付けだ。
例えば、AIが報酬に関する課題への対応策を3段階で提示することはできても、実際に人事、財務、法務の各部門をまたいでデータを修正し、案件処理を完結させるのは、ServiceNowのようなプラットフォームの役割だとした。
その上で、「人のミスは許容されても、ソフトウェアのミスは許されない。だからこそ、決定論的な企業向けワークフロープラットフォームはAI時代に一段と重要になる」と語った。
マクダーモット氏が描く将来像は「エージェンティック・ビジネス」だ。自社ではすでに顧客サービス案件の90%をAIエージェントが処理しており、人の介在が必要なのは10%にとどまると明らかにした。
これは単なる人員削減を意味するものではなく、人材を定型的・戦術的な業務から切り離し、批判的思考や創造的な問題解決、さらに「信頼構築」といった、より高付加価値の業務に振り向けることを意味すると説明した。
ServiceNowは、ITサービス管理の枠を超え、企業の「中枢神経系」かつ「AIコントロールタワー」へ進化することを目指しているという。マクダーモット氏は、セキュリティ企業Armisの買収にも触れ、ITに加え、製造装置や医療機器などの運用技術(OT)領域まで含めたセキュリティ可視化を提供していく方針を示した。
同氏は「サイバー犯罪は世界で3番目に大きい経済問題だ」と述べ、あらゆるシステムの記録とデータを一元的につなぎ、企業をリアルタイムで防御・最適化するプラットフォームの重要性を訴えた。