米証券取引委員会(SEC)は、ポール・アトキンス委員長の就任から1年で、暗号資産企業に対する姿勢を大きく見直した。民事執行や調査を相次いで縮小・停止する一方、暗号資産ETFの承認や他当局との連携、解釈指針の公表を進めており、執行偏重から制度整備へとかじを切った格好だ。
20日付のCointelegraphによると、SECは暗号資産関連企業を対象とした民事執行や調査手続きを相次いで打ち切った、または停止した。暗号資産ETFの承認を進めるとともに、規制面での連携も拡大しており、ゲイリー・ゲンスラー前委員長時代とは異なる対応が鮮明になっている。
アトキンス氏は2025年4月21日にSEC委員長に就任した。この1年間で、SECのデジタル資産規制と執行のあり方には明確な変化が表れた。
背景には政治面の変化もある。ドナルド・トランプ大統領は2024年の大統領選期間中、暗号資産業界に対してゲンスラー前委員長の交代を約束していた。ゲンスラー氏は2025年1月に辞任し、上院での承認手続きが完了するまで、マーク・ウエダ氏が委員長代行を務めた。
こうした流れは、アトキンス氏の正式就任前から始まっていた。ウエダ氏は、ヘスター・ピアース委員が率いる暗号資産タスクフォースを立ち上げ、SECは2025年2月、Coinbaseを皮切りに、暗号資産企業を対象とする民事執行や調査の取り下げに着手した。
アトキンス氏の就任後は、その方向性がさらに明確になった。SECは複数の暗号資産関連ETFを承認したほか、デジタル資産規制の連携に向けて米商品先物取引委員会(CFTC)と覚書を締結した。さらに、多くの暗号資産について、連邦法上の証券には当たらないとする解釈指針も示した。
従来のように執行を前面に押し出して規制する手法から、制度整備を軸とする方向へ転じたといえる。
アトキンス氏はCNBCのインタビューで、この1年について「時間は早く過ぎたが、その間に大きな進展があった」と振り返った。そのうえで、「SECで新しい時代を約束し、実際にそれが実現した。暗号資産分野では、執行中心の規制と当局の不透明性から脱する転換が起きた」と強調した。
暗号資産業界はこうした変化をおおむね歓迎している。一方、民主党は、SECとアトキンス氏に利益相反の疑いがあると批判している。SECが、トランプ大統領およびその家族と関係する企業に対する調査や執行を取り下げた後、こうした批判は強まったという。
もっとも、SECの融和的な姿勢が、そのまま規制の不確実性解消につながったわけではない。SECが暗号資産を巡る自らの権限を明確にするには、デジタル資産市場構造法(クラリティ法)の成立を待つ必要がある。
訴訟や調査の縮小、ETF承認、解釈指針の公表によって政策の方向性は変わったものの、最終的な規制枠組みは議会での法整備に委ねられる。今後の焦点は、SECが現在の執行縮小路線を維持するかどうか、また議会がクラリティ法を成立させ、監督権限と規制の境界をどこまで明確にできるかの2点にある。
アトキンス体制の1年は、暗号資産政策の明確な転換を印象づけた。ただ、規制体系の最終像はなお固まっていない。
一方、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)は先週、書簡でアトキンス氏を批判した。アトキンス氏が2月の下院委員会での証言で議会を誤導したと指摘したもので、4月15日付の書簡では、SECの2025会計年度の内部データを引用し、当会計年度の執行件数が過去10年で最も低い水準にあると主張した。