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Wellcome Sanger Instituteとオックスフォード大学、ケンブリッジ大学、メルボルン大学の共同研究チームが、D型肝炎ウイルスの全ゲノムを量子ハードウェアに初めて符号化した。量子コンピューティングを大規模なゲノム解析に応用できるかを探る初期の概念実証として注目される。TechRadarが4月20日(現地時間)に報じた。

今回の実験で対象としたのは、約1700塩基対のD型肝炎ウイルスのゲノム。比較的小規模なデータセットを用い、実際の生物学データを量子計算で扱える形式に変換できるかを検証した。

研究チームはこのゲノムを、IBMの156量子ビットの量子プロセッサ「Heron」に符号化した。単にデータを移すのではなく、実際のゲノム配列を量子演算が可能な構造へ変換した点に意義があるとしている。

研究チームがとりわけ重視するのが、パンゲノム解析への応用だ。パンゲノム解析は、単一の基準ゲノムではなく、複数個体のゲノム情報を合わせて遺伝的多様性を調べる手法で、扱うデータ量が急増しやすく、計算も複雑になりやすい。

こうした大規模解析では、既存の計算環境では処理速度や効率の面で限界があると指摘されてきた。

研究を主導したオックスフォード大学のセルギイ・ストレルチュク博士は、「パンゲノムは複雑な迷路のように絡み合っており、従来型コンピュータでは限界に突き当たる」と説明。そのうえで、「量子アルゴリズムで最適な経路を見つけるアプローチを試みている」と述べた。

量子コンピューティングは、量子ビットの重ね合わせを利用して計算を並列的に進められる可能性がある。研究チームは将来的な目標として、完全なヒトのパンゲノム解析を従来比で最大100倍高速化する可能性を示した。

もっとも、今回の成果は性能面での優位性を示したものではなく、あくまで実現可能性を確かめるPoC(概念実証)の段階にとどまる。

量子システムがより大きなゲノムを扱い、解析の全工程を実行できるようになるまでは、確立された既存手法を実際に上回れるかはなお不透明だ。研究チームも今回の成果を最終到達点ではなく、技術的なマイルストーンと位置付けている。

次の段階では、対象をより大きなゲノムへ広げるとともに、現在の実験的なワークフローを他の研究者も利用できるツールへ発展させる方針だ。今回の取り組みは、量子コンピューティングがバイオインフォマティクスの計算ボトルネックを解消し得るかを見極める最初の実証例の一つとなりそうだ。

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