世界のメモリ市場で、汎用メモリの供給不足が2027年まで長引くとの見方が出ている。AIサーバー向けの高帯域幅メモリ(HBM)への投資が優先され、スマートフォンやPC向けのDRAM、NANDフラッシュの供給が逼迫する可能性が高まっているためだ。価格上昇はすでに進んでおり、完成品コストへの波及も懸念されている。
20日付のGIGAZINEなどの報道によると、メモリ各社は生産能力の拡大を進めているものの、需要の伸びがそれを上回っている。DRAM市場の約90%を握るSamsung Electronics、SK hynix、Micronが増産投資を進めているが、新たな生産ラインの本格稼働は2027年または2028年にずれ込む見通しという。2026年中に実際の供給増に結び付きそうな案件は、SK hynixの清州工場などに限られるとされる。
Samsung Electronicsは京畿道平沢の第4工場で新たなDRAMラインを整備している。ただ、このラインも汎用DRAMよりAI向けHBMの生産に重点を置くとみられている。2026年に稼働を始めたとしても、量産の安定化や歩留まりの改善は2027年以降になる可能性がある。
需給ギャップは、既存の増設計画だけでは埋まりにくいとの分析もある。日本経済新聞は、足元の生産計画ベースでは半導体需要の60%程度しか満たせないと報じた。需要を100%満たすには2026年と2027年に年率12%ずつの生産増が必要になる一方、Counterpoint Researchは主要メモリメーカーの実際の増産率を7.5%前後とみている。
価格上昇圧力も強まっている。TrendForceは、2026年4〜6月期のDRAM契約価格が58〜63%、NANDフラッシュの契約価格が70〜75%上昇すると予測した。汎用メモリの価格はすでに急伸しており、2026年1〜3月期にはスマートフォン・PC向け汎用メモリの契約価格が前期比90%上昇したとも報じられている。
こうした動きは完成品コストを直接押し上げている。低価格帯スマートフォンでは、製造原価に占めるメモリ比率が足元で約20%だが、2026年半ばには40%近くまで上昇する可能性があるという。メモリ不足はスマートフォン、ノートPC、VRヘッドセット、携帯型ゲーム機など幅広い製品の値上げ圧力につながっている。
もっとも、供給能力が拡大しても、汎用市場の逼迫がすぐに緩和されるかは見通せない。米メディアThe Vergeは、新工場の相当部分がAIデータセンター向けHBM生産に振り向けられており、家電製品の価格上昇をどの程度抑えられるかは不透明だと指摘した。SKグループ会長も、半導体不足が2030年まで続く可能性に言及したという。
AI企業による調達競争も、需給の逼迫要因として挙がっている。報道によると、OpenAIはSamsung ElectronicsとのHBM供給契約の締結に動いており、サプライチェーン確保を急いでいる。2026年後半には12段積みのHBM4を大量調達する案を検討しているほか、Micronとも供給契約を結んだとされる。
一方、スマートフォン市場では需要鈍化の兆しも出ている。Counterpoint Researchによると、2026年1〜3月期の中国のスマートフォン出荷は前年同期比4%減だった。同期間のメーカー別ではXiaomiが35%減、Appleが20%増。中国市場のシェアはHuaweiが20%で首位、Appleが19%で続いた。
インド市場でも出荷は減少した。2026年1〜3月期のスマートフォン出荷は前年同期比3%減で、80機種超のスマートフォン価格が平均15%上昇したと集計された。AppleはiPhone 17シリーズの需要を追い風にシェア9%を記録し、Googleの出荷も前年同期比39%増えた。
メモリ各社の増産投資が実際の供給拡大にいつ結び付くのか、またHBM優先の投資姿勢が汎用メモリ市場の逼迫をどこまで和らげられるのか。今後の価格動向を占ううえでの焦点となる。