量子コンピューティングへの備えが暗号資産業界の課題として浮上している。写真=Reve AI

量子コンピュータがブロックチェーンの暗号基盤を揺るがす可能性が意識される中、BitcoinとEthereumで対応方針の違いが鮮明になっている。Bitcoinは既存の仕組みを極力維持する漸進的な改修を志向する一方、Ethereumはネットワーク全体を段階的に見直す方向でロードマップの検討を進めている。

Cointelegraphが20日(現地時間)に報じた。両ネットワークとも、ウォレット管理や取引署名で公開鍵暗号方式に依存している点は共通する。現在は楕円曲線暗号(ECC)が広く使われているが、十分に高性能な量子コンピュータが暗号を破る水準で実用化された場合、Shorのアルゴリズムなどによって公開鍵から秘密鍵を導き出される可能性が指摘されている。

そうなれば、ウォレットの所有権証明や取引検証の前提が揺らぎかねない。

もっとも、この脅威が直ちに現実化するとの見方は多くない。実際に暗号を破る水準の量子コンピュータの登場には、なお数年から数十年を要する可能性があるとの見方が研究者の間で一般的だ。

ただ、ブロックチェーンは一般的なサービスのように短期間で仕様を切り替えにくい。大規模な変更には長期の調整や検証に加え、利用者側の移行も必要になるため、緊急性は高くなくても準備は早めに始める必要がある。

この問題は暗号資産業界にとどまらない。Googleは2026年3月、自社システムを2029年までに量子耐性暗号へ移行する目標を示し、既存の暗号化やデジタル署名が量子コンピュータの脅威にさらされ得ると警告した。ブロックチェーンではデジタル署名が資産保有の検証そのものを支えるため、議論はより切実になりやすい。

では、BitcoinとEthereumはどう備えようとしているのか。

Bitcoinは、安定性を損なわない範囲で最小限の変更にとどめる方向で対策を探っている。代表例として挙がるのが「BIP-360」で、「Pay to Merkle Root(P2MR)」の仕組みを取り入れる案だ。暗号方式を全面的に置き換えるのではなく、取引出力の構造を調整し、公開鍵の露出を抑えることを狙う。

目標は、一足飛びに完全な量子耐性を実現することではない。既存システムとの互換性を維持しながら、より安全な取引形式へ移行するための道筋を整えることに重きが置かれている。

こうした姿勢は、Bitcoinコミュニティの保守的な運用哲学とも重なる。Bitcoinでは、分散性や予見可能性を損なわない範囲に限ってアップグレードを認めようとする傾向が強い。

その半面、量子技術の進展が想定以上に速ければ対応が後手に回るとの批判もある。逆に、拙速な変更が長期的な安全性を損なうことを懸念する声も根強い。

一方、Ethereumはより先回りした構造的な対応を検討している。Ethereumエコシステムでは、量子耐性への移行を単一技術の差し替えではなく、多層システム全体のアップグレード課題として捉え、ロードマップを整理している。

中核となる考え方は「暗号の柔軟性」だ。ネットワークの安定性を維持したまま、主要な暗号コンポーネントを入れ替えられる設計を指す。

ロードマップは複数のレイヤーごとに検討が進む。実行レイヤーではアカウント抽象化や代替署名方式、合意レイヤーではバリデーターの署名メカニズムをハッシュベース方式などへ切り替える案が俎上に載っている。

データレイヤーでは、量子環境下でも安全性を維持できるよう、データ可用性の構造を見直す案が議論されている。開発者はこの課題を長期戦略の優先事項に位置付けており、2020年代後半までを視野に入れている。

両ネットワークの違いは、単なる技術選択の差ではなく、構造やガバナンスの違いにも根差す。Bitcoinは基盤レイヤーの堅牢性と予見可能性を重視し、大幅な変更には高い合意水準を求める。

これに対しEthereumは、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行やスケーラビリティ改善など、複雑なアップグレードを実際に進めてきた。こうした背景から、Bitcoinは量子リスクを「最小限の介入で対処すべき遠い課題」と捉え、Ethereumは「早期の設計対応が必要なシステム全体の課題」とみなしていると整理できる。

もっとも、いずれの陣営も解決策を確定した段階にはない。Bitcoinでは複数の提案が検討されているものの、公式な移行パスはまだ採択されていない。Ethereumも計画面では先行するが、実装には技術的な難しさとコミュニティ内の調整が残る。

既存の脆弱な暗号で保護された資産をどう移すか、分散型コミュニティでアップグレードをどう調整するか、下位互換性と将来の安全性をどう両立させるかは、両ネットワークに共通する課題だ。

現時点で相場への影響は当面限定的とみられる。量子コンピュータの脅威がなお長期テーマとして受け止められているためだ。ただ、機関投資家が関連リスクの検討を本格化させる中、将来的には各ネットワークの準備状況や適応力が長期的な信頼性評価に反映される可能性がある。

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