写真=Samsung Electro-Mechanics

積層セラミックコンデンサー(MLCC)の供給リードタイムが最長24週に達し、汎用品を中心に需給の逼迫感が強まっている。世界大手のMurataとSamsung Electro-Mechanicsは90%台の高稼働が続く一方、収益性の高いAIサーバー向けを優先しており、受け切れない汎用品需要が2次サプライヤーに流れる動きも出てきた。証券業界では、本格的な供給不足局面はこれからとの見方が出ている。

業界関係者によると、台湾のディストリビューターであるFuture Electronicsは、Samsung Electro-Mechanics製MLCCのリードタイムが最長24週に達すると案内している。別の台湾ディストリビューター、Nichi Denboも、高級MLCCの供給リードタイムを14〜16週としている。

供給リードタイムは、顧客が発注してから製品を受け取るまでの期間を指す。一方、生産リードタイムは工場で実際に製品を作るのに必要な期間だ。生産リードタイムが8週間程度にとどまることを踏まえると、実際の納入までにはその2〜3倍の時間を要していることになり、流通在庫が相応に低下している可能性を示している。

稼働率も限界に近づいている。iM証券は2026年1〜3月期の稼働率について、Samsung Electro-Mechanicsが92%、Murataが95%と推定した。Samsung Electro-Mechanicsの在庫日数は30日程度で、適正とされる40日を下回る。高稼働が続く中でも在庫を積み増す余地がなく、需要が吸収されている状況とみられる。

Samsung Electro-Mechanicsは直近の決算説明で、「需給はかなりタイトだが、完全な供給不足ではない」と説明した。そのうえで、「先行するメーカーであるMurataの価格政策を注視している」と述べており、採算性の高い受注を選別できるほど生産ラインが埋まっていることをうかがわせた。

もっとも、過去の上昇局面のような全面的なパニック買いは、現時点ではまだ広がっていない。2017〜2018年には、MLCC不足が最終製品の生産に支障を来しかねないとの懸念が買い急ぎを招いた。2021〜2022年には、制裁で失速したHuaweiのシェア獲得を狙う中国スマートフォンメーカーの競争が、パニック買いを誘発した。足元では流通段階で3月初めに一部汎用MLCCの価格が引き上げられたものの、市場全体が過熱している段階ではないという。

背景には、需要の中心がAI関連へ移っていることもある。iM証券によると、過去のパニック買いの主役だったスマートフォン・PCメーカーは製品サイクルが短く、マクロ経済の影響も受けやすいため、在庫に敏感だった。一方、AI関連顧客は2〜3年単位のシステムロードマップに沿って調達を進める傾向があり、需給逼迫への反応がより長期化しやすい。このため、セットメーカーや流通が供給リスクをまだ十分に実感していない段階だとの見方が出ている。

一方で、これは今後なお需給が一段と引き締まる余地があることも意味する。例外的にAppleは2025年末、主要MLCCメーカーに対して長期供給契約(LTA)を求めたと伝えられている。サプライチェーン管理に最も敏感な企業の一つであるAppleが、先手を打ったとの受け止め方もある。

大手メーカーがAIサーバー向けを優先する中で、取りこぼした需要が中堅・後発メーカーに流入する動きも鮮明になってきた。MurataとSamsung Electro-Mechanicsが採算性の高いAIサーバー向けMLCCに生産能力を振り向けた結果、満たせない汎用MLCCの需要が2次サプライヤーに移っているためだ。AI向けMLCCは汎用品に比べて生産リードタイムが2〜3倍長く、大手のラインから外れる汎用品の数量も膨らみやすい。メモリー業界でSamsung ElectronicsとSK hynixが高帯域幅メモリー(HBM)を優先する構図に似ている。

代表例として挙がるのが台湾のYageoだ。iM証券によると、Yageoのコモディティー系受動部品の稼働率は、2025年7〜9月期の65%から、10〜12月期に75%、2026年1〜3月期には80%へ上昇した。ITセット需要が低調な中でも稼働率が改善しているのは、大手が手放した汎用品需要が後発勢に流れている間接的な証拠だと分析している。中華圏メーカーの稼働率が90%を超える局面が、業界全体の供給不足の前兆になるとの見立てだ。

供給不足に伴うパニック買いが起きやすい時期としては、2026年7〜9月期が意識されている。iM証券は、NVIDIAの次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」の立ち上がりに伴うサーバー向けMLCC需要の拡大と、IT需要の季節的な繁忙期が重なるとみている。超小型・高容量MLCCを多用するAppleの下期生産計画が強いことも、需給を押し上げる要因になり得るという。

今後の焦点は、Murataの販売価格政策と、中華圏メーカーの稼働率が90%を超えるタイミングだ。両者が重なれば、MLCC市況は本格的な上昇サイクルに入る可能性が高い。iM証券は「経験上、パニック買いを伴わないアップサイクルはなかった」としたうえで、「ダブルブッキング論争すら始まっていないことは、MLCCメーカーの利益コンセンサスになお上方修正余地があることを意味する」と分析している。

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