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メディア業界で生成AIの導入が広がっている。活用領域は映像制作の効率化にとどまらず、新たなコンテンツ形式の開拓や視聴体験の高度化、流通の最適化にまで及ぶ。技術進化が加速する一方で、著作権の扱いや創作者保護、審査体制の整備といった制度面の課題も浮き彫りになってきた。

これまで数秒のクリップ生成が中心だったAI動画ツールは、4K解像度や2分を超える長尺生成、音声の同時生成に対応する段階に入った。場面が切り替わっても人物の見た目を維持するキャラクター一貫性や、細かなカメラワーク指定に対応する制御技術も進んでいる。

こうした進化を後押ししているのが、大手テック企業による開発競争だ。Google DeepMindの動画生成モデル「Veo」は、せりふや効果音、BGMを映像と同時に生成できる水準に達した。Adobeも昨年初めに「Firefly Video」を投入し、ライセンス済みコンテンツのみで学習した点を前面に打ち出し、知的財産権を巡るリスクを抑えた商用利用を訴求している。ニューヨークのAIスタートアップRunwayの「Gen 4.5」は、マルチショット生成や音声生成を支援し、映画や広告の制作現場で活用が進む。

中国勢は価格競争力と供給量を武器に市場を広げている。短尺動画プラットフォーム大手Kuaishouの「Kling」は、生成、編集、変換など18種類の作業を単一プラットフォームで処理する。1月に香港市場へ上場したAIスタートアップMiniMaxは、動画生成サービス「Hailuo」を月額15ドルで提供しており、個人クリエイターや中小制作会社の利用を集めている。人物中心のシネマティックな映像品質に対する評価も高いという。

こうしたツールを活用した制作事例も増えている。

韓国の地上波各局は、選挙特番で生成AIの可能性を試した。KBSは2025年の大統領選開票特番で生成AIを導入し、得票率の変動に応じた候補者グラフィックやカウントダウン映像をリアルタイムで自動生成した。MBCは独立運動家の映像をAIで復元してオープニングに活用し、SBSはAIキャラクター「トゥピョロ」を前面に出した。もっとも、現時点では日常的な制作工程への定着というより、大型イベントでの実験的な活用にとどまっている。

民間の制作会社ではCJ ENMの動きが目立つ。独自のAI映像制作システム「Cinematic AI」を通じて、100%AIアニメーション「Cat Biggie」を昨年公開した。画像、映像、音響、音声を単一システムに統合し、3Dキャラクターや背景環境の処理を自動化する。CJ ENMは今年、AIドラマやAI映画の制作へと対象を広げる計画だ。

中国では商用化の動きがより前に出ている。ByteDanceが運営する中国向け短尺プラットフォームDouyinで公開された68話構成のAI実写ドラマ「皇太后と小公主の計略」は、累計2億1000万ビューを記録した。2025年4月公開のSFマイクロドラマ「The Sun That Fell」は、50人超の登場人物と200のシーンを含む全30話の制作工程をAIで処理し、制作期間は3カ月だった。10人のチームが10日以内に100分の映像を完成させる体制で、制作費は従来手法の5分の1水準に抑えたという。

韓国の制作会社でも実証が進む。短尺ドラマプラットフォームViglooは3月、全工程をAIで制作した短尺ドラマ「Bloodbound Luna」を公開した。全22話のダークファンタジーで、制作に投入した人員は10人未満としている。EOCONTENTS GROUPは、1話5分のエピソード10本で構成するシーズン制AIドラマ「まもなく、夜になります」を制作中だ。

一方、米国では創作者側の反発が根強い。米俳優・声優組合SAG-AFTRAは、AIによる複製利用の制限を主要争点に2023年、大規模ストライキを実施した。その後の協約では、AI活用時に本人の同意と補償を義務付けた。AI動画生成技術そのものは急速に進歩しているものの、本格的な商用コンテンツ制作への広がりはなお限定的だ。

YouTubeでは長尺のAIドラマも相次いで登場している。韓国でも、実写化が難しいファンタジー作品を100%AIで制作したコンテンツが注目を集めている。YouTubeチャンネル「Winkadia」が公開した18分のAIドラマは、累計再生回数が47万回を超え、視聴者からは「中途半端な実写ドラマより良い」といった反応も出ている。

◆編成から推薦へ、グローバル流通で存在感増すAI吹き替え

コンテンツ流通の現場でも、AIは基盤技術として定着しつつある。なかでも個々の利用者に最適化された推薦アルゴリズムは、従来の編成発想に代わる中核機能になっている。

Netflixによると、総視聴時間の75~80%はアルゴリズムによる推薦経由で発生する。利用者が自ら検索して作品を見つける比率は20~25%にとどまる。OTT利用者は一般に60~90秒の間に10~20本のタイトルを見比べるとされ、その短時間で見たい作品を提示できなければ離脱につながりやすい。

サムネイル選定にもAIアルゴリズムが使われる。同じ作品でも、利用者ごとに異なる画像が表示される仕組みだ。Netflixは1作品当たり7万~8万件のタグを付与している。ジャンル、感情トーン、結末のタイプ、主人公の特徴などを細かく分類し、視聴履歴と組み合わせて、クリック率が最も高いと見込まれるサムネイルを選ぶ。同じドラマでも、ロマンスを好む利用者にはカップルの場面を、アクションを好む利用者には追跡シーンを表示するといった運用が行われている。

グローバル流通の観点では、AI吹き替えの重要性も高まっている。音声複製、感情表現の維持、口の動きとの同期まで処理するツールが登場し、言語の壁を下げ始めた。

導入が最も速いのはSNSだ。YouTubeは2024年末にAI自動吹き替え機能を発表し、今年2月には27言語対応のサービスとして全クリエイター向けに提供を拡大した。Metaも昨年8月、FacebookとInstagramのReels向けに自動吹き替えとリップシンク機能を正式提供した。世界最多登録者を持つYouTuberのMrBeastが、マーク・ザッカーバーグに多言語対応の不足を直接指摘したことがきっかけになったという。

Netflixも吹き替え工程にAIを組み込んでいる。Netflixオリジナル作品は通常30言語、一般コンテンツは10言語に翻訳される。まずAIが翻訳の草案を作成し、その後、専門翻訳者が仕上げる方式だ。口の動きとせりふの同期を取るリップシンク最適化にもAIを活用する。一方、声の演技そのものは引き続き人が担う。Netflix関係者によると、「イカゲーム」シーズン3の吹き替えには1320人が動員されたという。

グローバルプラットフォーム各社がAI吹き替えを内製化する一方、韓国ではスタートアップや政府支援事業が市場参入を進めている。ESTsoftは「PERSO.ai」、Hudson AIは「Timber」、VIVBRIDGEは独自のAI吹き替えサービスを展開する。

韓国政府もAI吹き替え産業を支援する。科学技術情報通信部と韓国情報通信振興協会(KAIT)は「AI吹き替え特化K-FAST拡散」支援事業を推進した。予算は80億ウォン規模で、AI吹き替えコンテンツ約4400本(約1400時間)を確保し、Kチャンネル20本を構築した上で22カ国に配信する目標を掲げる。

◆規制と振興の両立へ、制度整備が急務

AIが制作と流通を同時に変えるなか、副作用への懸念も強まっている。著作権の帰属、創作者保護、流通時の審査体制を巡り、制度面の補完が必要との指摘が相次ぐ。

AI生成物の著作権は代表的な争点の一つだ。米ワシントンD.C.の連邦地裁は2023年のThaler裁判で、人間の創造性が介在しないAI生成物には著作権を認められないと判断した。米著作権局(USCO)も、著作権法は人間が創作した作品のみを保護するとの立場を示している。一方で、人間が実質的に寄与し、編集を加えた場合には部分的な保護が可能との留保も付けた。韓国でも文化体育観光部を中心に著作権法改正の議論が進むが、国際的な統一基準がなく、線引きは容易ではない。

声優、翻訳者、脚本家などの制作人材がAIに代替されることに伴う創作者保護も課題だ。韓国でも韓国声優協会や韓国シナリオ作家組合などが問題提起しているが、協約レベルでの保護装置整備には至っていない。

AI生成物が放送やオンラインで流通する際、その内容を審査する独立した基準も整っていない。今年1月施行のAI基本法はAI生成物の表示義務を課したが、映像内容そのものを判定する仕組みではない。このため、表示義務を審査体制と連動させる必要があるとの声が出ている。

メディア業界関係者は「現場では、使える技術と、使ってよい基準が別々に動いている印象がある」としたうえで、「創作者保護、表示、流通責任を一体で扱う体制が急務だが、法執行と振興を担う機関が分散している」と指摘する。生成AIがメディア産業を再編する速度に見合った制度整備が求められている。

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