韓国通信業界でAIシフトが加速している。写真=Shutterstock

韓国の通信大手3社が、ネットワーク中心の事業構造からAI中心へと軸足を移している。各社はそろって「AI企業」への転換を掲げており、AIを新たな成長エンジンとする競争が本格化してきた。

これまで通信業界では、ネットワークのカバレッジや通信速度が主な競争軸だった。足元では、AIが事業競争力を左右する中核要素として存在感を強めている。

業界では、こうした動きを産業再編の流れの一部とみる向きがある。SK Telecom、KT、LG Uplusの3社はそれぞれ異なる戦略を打ち出しており、AIを軸にした「3社3様」の競争構図が鮮明になりつつある。

◆SK Telecom、フルスタックAIを前面に

SK Telecomは、AIインフラ、モデル、サービスを一体で展開する「フルスタックAI」戦略を前面に押し出している。データセンターやGPU(画像処理プロセッサ)基盤の大規模計算インフラを整備し、GPUaaS(GPU as a Service)として提供する事業も拡大。AIのバリューチェーン全体をカバーする体制の構築を進めている。

チョン・ジェホンSK Telecom代表は先月、株主総会を前に株主へ送った書簡で、これまでのAI事業は多領域でのインキュベーション段階だったと説明。そのうえで、今後は競争力を持つ事業に集中し、拡大するAI競争の中で持続可能性を確保する方針を示した。

同社は「ソブリンAI」戦略にも力を入れる。国家や企業が外部クラウドへの依存を抑えながらAIを活用できるよう、用途に応じたインフラを構築する考え方で、データ主権を巡る課題の拡大を背景に、新たな市場創出につながるとみている。

グループの総合力を生かし、AIデータセンター(AI DC)と産業・企業向けAIサービス、自社モデル「A.X K1」を統合提供する「ソブリンAIパッケージ」によって、新市場の開拓を狙う。

提携戦略も重要な柱だ。SK Telecomは最近、ArmとRebellionsと次世代AIインフラ革新に向けた戦略的パートナーシップを締結し、AIサーバー開発で協力することを決めた。

先月、スペイン・バルセロナで開かれたMWC26では、グローバルサーバメーカーのSupermicro、エネルギー管理企業のSchneider ElectricとAIデータセンター分野での協力協定を締結した。こうした連携を通じ、フルスタックAI戦略を強化し、AIエコシステム拡大に必要なソリューションの提供を目指す。

SK Telecomは、政府が進める「独自ファウンデーションモデルプロジェクト」の第2段階評価にも進んだ。自社開発の「A.X K1」で最終候補入りを目指している。

A.X K1は、国内初の500B級の超大規模AIモデルだ。主要ベンチマークではDeepSeek V3.1など世界のAIモデルと同等、あるいはそれを上回る性能を示したとしている。年内からマルチモーダル機能を順次追加し、今後は兆単位パラメータ規模への拡張も視野に後続開発を進める計画だ。

業界では、高度化したA.X K1を基盤とする個人向け・法人向けサービスが本格投入されれば、市場支配力の強化につながるとの見方も出ている。

◆KT、B2B軸に「AXカンパニー」転換を加速

KTは、B2B市場を中心に「AX(AIトランスフォーメーション)カンパニー」戦略を推進している。単なるAIソリューションの提供にとどまらず、企業運営全体をAI中心へ転換するためのプラットフォーム事業者への進化を狙う。

先月のパク・ユンヨン代表就任直後に実施した組織改編も、この方向性を色濃く反映した。研究開発(R&D)組織を「AX未来技術院」に再編し、新たに「AX事業部門」を設置。B2B AX分野の競争力強化を進める。

KTはこれまで、競合に比べ自社AIの競争力でやや見劣りするとの評価を受けてきた。自社LLMは期待したほどの反響を得られず、独自AIファウンデーションモデルプロジェクトでも結果を残せなかった。Microsoftとの提携推進についても、自社技術単独で勝負するというより、提携を通じた戦略と受け止める向きがあった。

そうした中、KTは新組織を通じてB2B市場に重点を置く方向へ戦略を見直した。AI未来技術院の設置について同社は、技術リーダーシップと専門性を高めるための選択だと説明している。

市場では、KTが収益性を重視した現実路線にかじを切ったとの見方がある。業界関係者は、既存の法人顧客基盤を生かし、収益化の可能性が高いB2B市場に集中しているように見えると分析した。

最終的には、データインフラや運用体系などAI関連ソリューションを支援し、収益につなげることを目標に掲げる。パク代表は最近、ペ・ギョンフン副首相兼科学技術情報通信部長官と通信3社代表による懇談会後、重点事業の方向性として「AXプラットフォームカンパニーへの飛躍」を示した。

パク代表は、AIサービスを演劇の舞台に立つ俳優に例えるなら、自社が目指すAXプラットフォームカンパニーは、その舞台そのものをつくる存在だと説明した。

◆LG Uplus、「ixi-O」を軸にAIソフト企業へ

LG Uplusは、ホン・ボムシク代表の下で「安全」と「セキュリティ」を中核キーワードに掲げる。通信セキュリティ問題が業界全体のリスクとして浮上する中、これを競争力へと転換する構えだ。

2024年末に就任したホン代表は、この1年余りにわたり「基礎体力」を強調し、社内基盤の立て直しを進めてきた。足元では、AIエージェント「ixi-O」で培った音声AIの能力を、さまざまな分野へ広げる戦略を打ち出している。

ホン代表は先月のMWC26記者懇談会で、通信とAX技術のソリューション化を主導するAI中心のソフトウェア企業を目指すと表明した。ixi-Oそのものの提供に加え、AI技術スタックの提供という2本柱でグローバル市場に進出する方針も示した。

ソフトウェア事業の高収益構造を背景に、増収率よりも利益成長を重視する形で財務体質の強化も図る。

LG Uplusは、本格的なグローバル展開に先立ち、既存サービスを高度化した「ixi-Oプロ」も投入する計画だ。話者識別に加え、口調や会話の流れ、感情状態まで分析し、顧客に合わせた情報を先回りして提案するAIエージェントになるという。

これを通じて、フィジカルAIと各種デバイスをつなぐサービスエコシステムの構築も進める考えだ。

◆3社3様のAI戦略、焦点は収益化

業界では、通信事業者の役割そのものが変わり始めている点に注目が集まっている。AIを軸に事業構造を再編し、新たな収益源を掘り起こせるかが、今年の最大の課題になるとの見方もある。

大規模投資の回収を見据えれば、各社は今後、収益化を一段と重視する必要があるというのが業界の大勢だ。別の業界関係者は、これまで蓄積してきた通信ネットワーク技術をどうAIサービスへ接続するかがカギだと指摘する。3社とも具体的なロードマップは描き終えており、今後は成果で示す局面に入るとの見方を示した。

世界のビッグテックがAIモデルとクラウドインフラを同時に握る中、通信各社がどのように差別化された競争力を確保するかも重要な変数だ。別の関係者は、投資と戦略競争が重なる過渡期にあり、持続可能な収益モデルをいち早く確立した事業者が市場の主導権を握るとの見通しを示した。

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