英国金融行為監督機構(FCA)は、2027年10月に予定する暗号資産規制の導入を前に、規制対象となる活動の範囲を明確にする追加協議を始めた。ステーブルコインの発行、取引プラットフォームの運営、保管、ステーキングなど、どの業務が新制度の対象に入るかを整理する。
16日付のThe Blockによると、FCAは個人や企業に加え、業界団体、政策立案者、学界からも意見を募る。意見公募の締め切りは6月3日。暗号資産関連企業は9月30日からFCAへの認可申請が可能になる。
今回の手続きは、英国が段階的に整備してきた暗号資産規制の一環だ。英国は2月に「金融サービス市場法(暗号資産)規則2026」を導入し、新たな暗号資産関連業務をFCAの監督対象に組み込む準備を進めてきた。
これにあわせてFCAは、ステーブルコインの発行、暗号資産の保管、健全性規制、上場審査や開示、市場濫用などを巡り、個別の協議も継続してきた。
FCAは今年下半期に政策声明を公表する予定で、将来の暗号資産制度に向けたルール整備は実質的に終盤に入ったとの見方を示している。今回の協議は、制度の適用対象を明確にする補完作業に当たり、最終的な政策声明は秋の公表を目指すとしている。
あわせて、現行制度の空白にも言及した。FCAによると、新制度の施行までは、暗号資産は金融プロモーション規制と金融犯罪対策を除き、おおむね規制対象外の状態にある。業界に対しては、現行制度と新制度の間にあるギャップをあらかじめ点検する必要があることを示した形だ。
英国の暗号資産規制は段階的に拡大してきた。2020年にマネーロンダリング対策の監督を開始し、2021年には個人投資家向けの暗号資産デリバティブ販売を禁止。2023年には暗号資産に金融プロモーション規則を適用した。今回の協議は、その延長線上で包括的な規制枠組みの外縁を固める手続きと位置付けられる。
一方で、業界の受け止めは分かれている。Gerson Solicitorsでホワイトカラー犯罪を担当するパートナー、トーマス・キャティは、英国の暗号資産規制導入は欧州に比べて大きく出遅れていると指摘した。
キャティは、欧州では包括的な枠組みの導入がすでに進んでいるとした上で、英国は依然として時間のかかるプロセスをたどっているとの見方を示した。その一方で、業界は今回の手続きに積極的に関与すべきであり、最終的には英国も暗号資産企業の拠点として欧州に大きく見劣りしない水準に近づくとの見通しを示した。
これに対し、DeFi分野のモバイル決済プラットフォームを手がけるZumoの創業者、ニック・ジョーンズは今回の動きを前向きに評価した。協議文書が相次ぐことへの疲労感はあり得るものの、業界にとっては非常に前向きな進展だと述べた。
また、早期に対応する企業ほど新制度への備えを進めやすくなるとし、FCAの暗号資産ロードマップについて、他地域に比べて体系的で段階的、かつ予見可能な手続きだと評価した。
今後は議論の対象もさらに広がる見通しだ。FCAは年内に、DeFi、分散型台帳技術を活用する企業のオペレーショナル・レジリエンス、暗号資産企業に適用する金融犯罪ガイド改定案についても追加協議を実施すると予告した。
英国の暗号資産市場は、単なる登録制度の段階を超え、認可や営業上の義務、インフラ要件まで含む本格的な規制下に組み込まれる段階に入りつつある。