米国防総省がFordやGeneral Motors(GM)など米自動車大手に対し、電気自動車(EV)関連計画の先送りも視野に入れながら、軍需品の増産に向けて生産能力を振り向けられるか打診していることが分かった。EV需要の鈍化で稼働余力が生じる可能性のある工場や人員を、弾薬などの防衛生産に活用できるかを探っている。
16日付のCryptopolitanによると、国防総省の高官はGMのメアリー・バーラCEOやFordのジム・ファーリーCEOを含む主要自動車メーカーの経営陣と協議した。
協議は初期段階にあるが、検討対象は広い。国防総省は、各社の人員や工場スペース、既存の生産体制を活用し、弾薬などの防衛関連製品を生産できるか見極めている。
協議にはGE Aerospaceや車両メーカーのOshkoshも参加した。国防総省関係者は「国防産業基盤を迅速に拡大するため、利用可能な民生技術や商用ソリューションを活用する」としたうえで、戦闘員が決定的な優位を維持できるようにする考えを示した。
こうした動きの背景には、米EV市場の減速がある。EVは2026年1〜3月期の米新車販売の5.9%を占めたが、2025年1〜3月期の7.6%、2024年1〜3月期の7.2%をいずれも下回った。
EV比率は2025年7〜9月期に10.6%でピークを付けた後、低下に転じた。販売上位はTesla Model YとTesla Model 3が引き続き占め、3位にはToyota bZが入った。Hyundai Ioniq 5、Chevrolet Equinox EVがこれに続いた。
国防総省が自動車業界の生産能力転用を模索するのは、こうした需要減速を踏まえた判断だ。EV需要が想定を下回り、一部設備の遊休化や稼働率低下が進む可能性がある中、その余力を武器在庫の補充に生かせるかを検討している。
一方で、Fordを巡っては中国との協業を巡る議論も浮上している。ジム・ファーリー氏は最近、中国自動車メーカーの米国進出を阻止すべきだと発言した数日後、中国企業との協力拡大に前向きな姿勢を改めて示した。
同氏はFox Newsで「彼らを米国から排除すべきだ」と述べた一方、Fordの組織改編を説明する場では、中国メーカーについて、より低価格で先進的な車両によって業界を変えていると評価した。
さらに同氏は、Fordにとっての実利にも言及した。「中国のパートナーを価値ある存在と見ている。彼らはFordが世界各市場で競争力を維持する助けになる」と述べた。
FordはZhejiang Geely Holding Groupと欧州での生産能力共有を協議してきたほか、BYDとはガソリン・電気ハイブリッド車向けバッテリーの供給を巡って協議した。中国国内ではChangan Automobile、Jiangling Motorsとすでに協力関係にある。
ジム・ファーリー氏は今年初め、トランプ政権関係者に対し、中国自動車メーカーが米国で車両を生産する場合は、米自動車メーカーが管理する合弁方式とすべきだとの考えも伝えた。
米製造業は足元で、EV需要の減速、防衛生産拡大の要請、中国企業との関係見直しという複数の課題に直面している。国防総省が自動車工場の人員や設備をどこまで軍需生産に振り向けるかはなお不透明だが、米製造基盤を防衛産業寄りに再編する議論が強まりつつある。