アーサー・ヘイズ氏。写真=Reve AI

暗号資産市場の先行きに見方が分かれる中、BitMEX共同創業者のアーサー・ヘイズ氏は、ビットコイン相場の反発を左右する最大の要因は米連邦準備制度理事会(FRB)の流動性供給だとの見方を示した。

米ブロックチェーンメディアのCryptopolitanによると、ヘイズ氏は16日(現地時間)、足元の相場環境を「3つの主要シナリオ」と「1つの中間シナリオ」に分けて整理した。

ヘイズ氏は、核戦争のような極端な事態は投資判断の前提として扱いにくいとして除外。そのうえで、戦争が収束する場合、イランがホルムズ海峡の支配を維持する場合、米国が武力で海峡を再開放する場合の3つを軸に、資産配分を見直すべきだとした。

同氏が最も重視したのは、中東情勢そのものではなく米国内の雇用ショックだ。戦争が止んだとしても、AIが米国のホワイトカラー業務を代替していく流れの方が、景気への影響は大きいと分析した。

同氏は、米国経済は国内総生産(GDP)の約70%を個人消費が占めていると指摘。消費が銀行信用に依存する構造であるため、貸出資産の劣化が広がる可能性があるとした。AI起因の景気後退が、2008年のサブプライム危機並みに深刻化する恐れがあるとも警告している。

この文脈で、暗号資産ゲーム関連のスタートアップを例に挙げた。2025年のクリスマス前後にAnthropicの最新AIモデル「Claude」を試したところ、短時間で実用レベルのコードを生成できたという。

その後、エージェント型の業務フローを導入し、コーディングとコードレビューを常時自動化した結果、人員を50%削減する計画まで立てたとしている。

ヘイズ氏は、優秀なエンジニアの生産性は10倍から100倍に高まり得る一方、平均的な労働者は労働市場から押し出される可能性があるとみる。米各州の年間失業給付の中央値が2万8000ドル(約420万円)程度であるのに対し、多くの知識労働者の年収は8万5000〜9万ドル(約1275万〜1350万円)水準にあるとも言及した。

もっとも、こうした状況でもビットコインの戻りは限定的にとどまる可能性があると同氏はみている。FRBが実際に流動性供給に踏み切るまでは、ビットコインは8万〜9万ドル(約1200万〜1350万円)程度での反発にとどまる可能性があるとした。

第2のシナリオは、イランがホルムズ海峡を実効支配し、友好国の船舶に限って通航を認めるケースだ。

同氏は、イランが200万ドル(約3億円)規模の通航料を、人民元、暗号資産、制裁下のドル建て取引、あるいは別の取引手段で受け取る可能性を想定。こうした枠組みがペトロダラー体制を直接揺るがしかねないと主張した。

その場合、中国に対して貿易赤字を抱える主要国が米国債や米ハイテク株を売却し、現物の金を購入したうえで、上海や香港で人民元に換える動きにつながる可能性があるという。

ヘイズ氏は、戦争勃発後、FRBが集計する海外の米証券保有額が約630億ドル(約9兆4500億円)減少したと指摘した。さらに、米国の非金融用途の金は直近5カ月のうち4カ月で最大の輸出品目に浮上したとも述べた。

また、イランが国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網を利用できないことから、中国の人民元建て国際決済網の取引拡大も重要な変数になるとみている。

ヘイズ氏は「人民元と金が国家間貿易の2つの中核通貨になる可能性が最も高い」としたうえで、「ドルを保有していても、自国の貨物が攻撃されない保証がないなら、なぜドルを持つ必要があるのか」と述べた。

第3のシナリオは、米国が武力によってホルムズ海峡を再開放するケースだ。

この場合、ドルへの信認は一時的に回復する可能性がある一方、イランは大きな打撃を受けると同氏はみる。湾岸地域のエネルギー生産が崩れれば、中央銀行は原材料価格の急騰に直面するなかで、再び流動性供給を迫られるとの見方を示した。

一部の国はハイパーインフレに直面し、米国とロシアだけが大規模な増産余力を持つ供給国として残る可能性があるとも指摘した。

ただ、このケースでもビットコイン高が長続きするとは限らない。ヘイズ氏は「イランへの懲罰的な爆撃で封鎖が解かれ、その後にイランがペルシャ湾のエネルギー生産をすべて破壊するなら、ビットコインの上昇は短期にとどまる」と語った。

インフレが価格を押し上げたとしても、イランの国家体制崩壊が第三次世界大戦のリスクを高めれば、リスク資産への選好は再び弱まる可能性があるとの判断だ。

市場の視点でみれば、同氏のメッセージは戦争そのものの解説というより、流動性と決済体制の変化に主眼がある。ビットコイン、金、債券をあわせて見ながら、人民元決済の拡大、エネルギー供給ショック、米消費の減速がどの順番で表面化するかが重要だと説明した。

そのため、ビットコインの方向感も地政学イベントそのものより、FRBがいつ介入するか、そしてドル体制の揺らぎがどの程度広がるかに左右される可能性がある。

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