政府がマイデータ制度の対象を全分野に広げる。金融を中心に進んできたデータ活用が交通、文化、流通などへ広がることで、フィンテック業界を軸に新たな事業機会が生まれるとの見方が強まっている。今後は、金融と非金融データを横断した連携と、データ基盤を巡る競争が本格化しそうだ。
個人情報保護委員会は2月、「個人情報保護法施行令」を改正し、これまで医療・通信分野に限られていた本人情報の送信要求権を、交通・文化・余暇・流通など全分野に拡大した。これにより消費者は、自らの個人情報を直接ダウンロードできるほか、個人情報管理専門機関を通じて各種データを一元的に集約し、活用できるようになる。
改正施行令は猶予期間を経て、今年8月から段階的に施行される予定だ。
制度拡大に合わせ、業界との意見交換も進めている。個人情報保護委員会は3日、金融マイデータ事業者など17の企業・協会が参加する懇談会を開き、金融と非金融データの連携拡大策を協議した。
会合では、金融マイデータが口座情報の一括照会や借り換えローンの比較、金利引き下げ要請といった実用的なサービスを生み出してきた一方、活用できるデータが金融分野に限られ、サービス高度化や収益化には限界があったとの指摘が出た。
今回の制度見直しの焦点は、金融データと非金融データの結合にある。個人情報保護委員会は、総額17億ウォンの公募事業を通じて融合サービスの事例発掘を進めるほか、データ活用で生じた収益を情報主体と分け合う「収益共有モデル」の導入も後押ししている。
具体例としては、カード、通信、ショッピング、サブスクリプションの各データを連携し、利用者ごとに最適化した金融商品を提案するサービスや、消費パターンに基づく節約ガイドなど、生活密着型のサービスが挙げられた。
データ活用の枠組み自体も変わる。これまでは金融機関が保有するデータを軸にサービスが設計されてきたが、今後は個人が多様なデータを統合管理し、それを基にサービスを選ぶ仕組みへ移行する見通しだ。
フィンテック業界、追加拡張を要望
業界では、今回の制度変更をフィンテック企業にとって追い風と受け止める見方が強い。
既存の金融機関は金融データと顧客基盤に強みを持つ一方、フィンテック企業は多様な非金融データの活用やユーザー体験の設計で競争力を持つためだ。対象範囲が全産業に広がるほど、異種データを素早く結び付けてサービス化できる企業が優位に立つとの分析もある。
もっとも、制度定着に向けた課題も残る。送信義務の対象となる事業者が、平均売上高1800億ウォン超、情報主体100万人以上といった基準を満たす大規模事業者に限られるため、導入初期にはデータ供給が制約される可能性がある。このほか、APIベースの送信体制の構築や、個人情報管理専門機関の信頼性確保など、インフラ整備が十分に進まなければサービス拡大が遅れるとの指摘も出ている。
それでも業界では、制度拡大を総じて前向きに受け止めている。今回のマイデータ拡大が、金融業界の競争軸を「商品」から「データ」へ移す転機になるとの見方もある。
金融機関、フィンテック企業の双方にとって、データプラットフォーム事業者への転換は避けられないとの見方が広がる中、非金融データの活用とユーザー体験に強みを持つフィンテックに有利な環境が整うとの期待も出ている。今後の競争は、どれだけ多様なデータを確保し、精緻に組み合わせて実質的な価値と収益につなげられるかがカギになりそうだ。
フィンテック業界関係者は「マイデータ制度の全分野への拡大は、データ産業全体に前向きな変化をもたらす」と話す。「金融マイデータは、分散していた個人の資産情報を一カ所で確認できるようにし、利便性を大きく高めた。マイデータ事業者を通じたサービス加入者も1億人を超え、日常的なサービスとして定着した」と説明した。
その上で、「こうした成果を踏まえ、送信要求権が医療、通信、エネルギーなど全分野に広がれば、企業には新サービスや新たなビジネスモデルを生み出す機会が開かれる」と指摘した。「各分野のデータがAPIで提供され、マイデータ事業者がそれを活用するようになれば、データインフラ事業者やプラットフォーム事業者の参入も活発になり、データ産業全体の活性化にもつながる」との見方を示した。
別の関係者も「マイデータの拡張は、プラットフォーム業界がかねて期待してきた変化であり、サービス拡大の面で大きな機会になり得る」と話した。「扱えるデータの範囲が広がるほど、新たなサービスが可能になり、プラットフォーム基盤を持つ事業者に有利な環境が整う」と述べた。
さらに、「マイデータをプラットフォーム経由で利用する人が多いだけに、フィンテック業界ではこうした政策の方向性を歓迎している。より多くのサービスを生み出すにはデータ範囲の拡大が不可欠で、今後の追加的な制度拡張も必要だ」と語った。