パキスタン(写真=Shutterstock)

パキスタン中央銀行は15日(現地時間)、認可を受けた仮想資産サービス事業者(VASP)による銀行口座の開設・維持を容認した。顧客資金の分別管理や現金取引の禁止、マネーロンダリング対策の強化を条件に、2018年から続いてきた暗号資産関連取引への制限を事実上見直す措置となる。

新たな指針では、パキスタン国内の規制対象銀行が、パキスタン仮想資産規制庁(PVARA)の正式ライセンスを取得した、または同庁の異議なし確認書(NOC)を保有するVASP向けに口座を開設できるようにした。銀行は取引開始前に、当該事業者のPVARAライセンスを直接確認しなければならない。

中央銀行は、VASPを銀行システムに組み入れる一方、厳格な管理を求めた。銀行は顧客資金を保管する専用口座をパキスタン・ルピー建ての無利息口座として開設し、その口座は認められたVASP取引の決済に限って利用できる。

現金の入出金は認めず、事業者資金と顧客資金の混在も禁止した。こうした資金を担保に供することもできない。

また、銀行やその他の規制対象機関が、自己資金や顧客預金を使って暗号資産に直接投資・取引・保有することも禁じた。正式ライセンスをまだ取得していない事業者でも、NOCを確保していれば、限定目的の口座開設は認められる。

ただし、実際の取引サービスを提供できるのは、PVARAの正式ライセンス発給後に限られる。

マネーロンダリング対策(AML)とテロ資金供与対策(CFT)に関する義務も強化した。VASPとその利用者は新指針に加え、2010年のAML法(マネーロンダリング防止法)の適用対象となる。銀行には、各事業者に対する包括的なデューデリジェンスの実施が求められる。

銀行は暗号資産特有のリスクを反映するよう顧客リスク評価の枠組みを見直し、取引関係の開始後も継続的なモニタリングを行う必要がある。

今回の見直しは、2026年の仮想資産法成立を受けた措置だ。同法は、暗号資産関連活動を所管する規制機関としてPVARAを設立した。

2025年7月にはアリフ・アルビ大統領がPVARAを暫定機関として先行発足させ、その後BinanceとHTXにNOCが発給された。議会は3月に仮想資産法を可決し、PVARAを恒久的な法定機関へ移行させた。

背景には、制度の外側で急拡大してきたパキスタンの暗号資産市場がある。2018年の中央銀行指針は、世界的にも活発な同国の非公式な暗号資産市場を、正式な金融システムの外に置く結果を招いていた。

Chainalysisの「2025年グローバル暗号資産採用指数」で、パキスタンは世界3位となった。Chainalysisはこの順位について、送金需要の大きさ、ステーブルコインを通じたドルへのアクセス、モバイル中心の金融サービス拡大を反映したものだと分析している。

パキスタンは制度整備と並行し、暗号資産・デジタル資産の活用範囲も広げている。政府は、余剰電力をビットコイン採掘と人工知能(AI)データセンターに振り向ける構想を公表した。

最大20億ドル規模の政府資産トークン化も検討している。ドル連動型ステーブルコインを送金に活用する実証も進めており、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のパイロット実施に向けた準備も並行して進めている。

新制度にはシャリア諮問委員会も盛り込まれた。イスラム金融の原則を暗号資産規制に接続する初期の事例の一つと位置付けられている。

今後の焦点は、PVARAがNOC発給段階から正式ライセンス付与の段階へ、どこまで速やかに移行できるかにある。PVARAは今回の中央銀行指針について、「従来の制限的な環境から、構造化された規制枠組みへの転換を示すものだ」と説明した。

そのうえで、政策当局、規制機関、業界関係者の調整がなお続いている状況を反映したものだとしている。

今回の措置は、パキスタンの非公式な暗号資産市場を制度金融に取り込む転換点となる可能性がある。口座開設の容認と顧客資金の分別管理、AML規制の適用を一体で求め、市場拡大そのものよりも、統制可能な取引構造の構築を優先した点が柱となる。

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