アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは、人工知能(AI)を同社にとって中核的な成長機会と位置付け、Amazon Web Services(AWS)の事業拡大と自社AIチップの強化を軸に投資を進める方針を示した。AIを巡る過熱論については否定し、「一生に一度の機会だ」と強調した。
米TechRadarによると、ジャシー氏は11日(現地時間)、株主向け年次書簡に合わせて公表したブログで、AIの将来に関する6つの見方を示した。
その中でまず、AIバブル論を退けた。あらゆる顧客体験がAIによって再構成され、AIでしか実現できない新しい体験も数多く生まれるとの見方を示した。
AIが過大評価されているのか、バブルなのか、十分な収益性を持つのかといった議論が続くなか、同氏はアマゾンの答えは「ノー、ノー、イエス」だと述べたという。
AIの普及速度についても、「AIほど速く採用された技術は見たことがない」と言及し、ここ数年のChatGPTの急成長を例に挙げた。さらに、AIの波及効果は電力の普及に匹敵し得るとし、電力の定着には40年を要した一方、AIはそれをはるかに上回るスピードで広がっているとの認識を示した。
アマゾンは、その変化の中心にAWSを据える。ジャシー氏によると、2026年1〜3月期時点でAWSのAI関連売上高は年率換算で150億ドルを超え、成長ペースも加速している。
同氏は、AWSが競合より幅広い機能を提供しているほか、グローバルネットワークを通じて推論処理を利用者に近い地域で実行できる点を強みとして挙げた。非AIサービスとの統合エコシステム、セキュリティ、運用性能も優位性だと説明した。
一方で、需要はなおインフラの増強ペースを上回っているという。AWSの2025年10〜12月期の売上高は年率換算で1420億ドルに達し、前年同期比24%増だった。
アマゾンは2025年に新規の電力容量として3.9ギガワット(GW)を追加したが、それでも需要には追いついていない。2027年末までに総電力容量を2倍に増やす計画だ。
ジャシー氏は、絶対額ベースの成長規模は非常に大きいとしつつも、なお取り込めていない需要が残っていると述べた。AI需要の拡大に伴い、顧客がより多くの計算資源を求めているためだ。
自社チップ事業もAI戦略の重要な柱とする。AWSは2018年に「Graviton」を投入して以降、チップ事業を拡大しており、2025年12月には第4世代のハードウェアを発表した。
ジャシー氏は、これまでAI市場は事実上NVIDIA製チップを中心に回ってきたとしながらも、足元では別の流れが生まれていると指摘した。NVIDIAとの協業は続ける一方、顧客はより高い費用対効果を求めているとした。
特に「Trainiumの需要が急増している」と述べ、自社AIチップの経済性を強調した。需要の大きいAIチップを自社で確保できれば、顧客のコストを抑えながら、AWSの収益構造の改善にもつながると説明した。
さらに、Trainiumの定着が進めば、年間で数百億ドル規模の設備投資負担を削減でき、推論向けチップを外部調達に依存する場合と比べて、営業利益率で数百ベーシスポイントの優位性が見込めると述べた。
大規模な先行投資の方針も改めて確認した。AWSとアマゾンは、土地や電力、建物、チップ、サーバ、ネットワーク機器に先行して資金を投じ、その後に収益化する構造を維持しているという。
こうした先行投資により、次の大型投資をより早く始められるようになるとも説明した。AWSが過去に最初の大きな成長局面を迎えた際にも同様のサイクルを経験しており、その結果には満足しているとした。
今後の需要基盤についても強気の見方を示した。ジャシー氏は、OpenAIによる1000億ドル超のコミットメント事例に触れたうえで、すでに契約済みだが未公表の案件や、最終手続きを進めている顧客契約がほかにも複数あると明らかにした。
大口顧客の獲得や未公表案件の積み上がりが続けば、AWSのAIインフラ拡大は一段と加速する可能性がある。
ジャシー氏は最後に、「AIは現時点の成長だけでも前例のない水準にあり、今後の拡大余地はさらに大きい。一生に一度の機会だ」と述べた。アマゾンは、AWSのインフラ競争力と顧客基盤、自社チップ事業を新たな成長軸として束ね、AI分野での主導権拡大を狙う。