ホルムズ海峡を巡り、暗号資産での通航料徴収案に制裁リスクが浮上した。写真=Reve AI

海運会社がイランに対し、通航料などの名目で暗号資産を支払った場合、米国の制裁に抵触するリスクがある――。Cointelegraphが11日付で報じたところによると、ブロックチェーン分析会社Chainalysisは、こうした支払いが制裁上の「物質的支援」と見なされる可能性があると警告した。

Chainalysisのシニア・インテリジェンス・アナリスト、ケイトリン・マーティン氏は、現行の制裁枠組みの下では、主要海上ルートの通過に伴う費用であっても、イラン政権への支払いは「物質的支援」に該当し得ると指摘した。

同氏は、こうした決済が米国などの制裁措置に抵触する可能性があると説明。イラン革命防衛隊が複数の法域で制裁対象となっているほか、イラン自体も米国の包括的制裁下にあるため、制裁違反のリスクは大きいとの見方を示した。

今回の警告は、イランがホルムズ海峡を通過する船舶から暗号資産で通航料を徴収する可能性が取り上げられる中で示されたものだ。ドナルド・トランプ米大統領は、テヘランが主要水路を航行する船舶に通航料を課そうとする動きを容認しない考えを示していた。

Chainalysisは、こうした警戒感の背景として、イランでデジタル資産の活用が広がっている点を挙げる。マーティン氏は、オンチェーンデータに基づき、イランがとりわけステーブルコインを活用し、石油や武器、原材料の取引を支えてきたと説明した。一方で、暗号資産は制裁回避の決定打にはならないとも強調した。

同氏は、ブロックチェーン上の取引は従来の金融ネットワークを介さずに国境を越えた送金を可能にする一方、記録が透明かつ恒久的に残る点に言及。「多くの面で、暗号資産は従来の制裁回避手段よりも追跡しやすい」と述べ、捜査当局が資金の流れを換金地点まで追跡し、資産凍結や差し押さえにつなげる可能性があるとした。

同様の動きはイランに限らない。ロシアでも、2022年のウクライナ侵攻後に制裁を受けたのち、A7A5などのデジタルトークンを用いて越境取引を支援した事例があるとされる。制裁対象国が既存の金融システムの外にある決済手段を模索する一方、ブロックチェーンネットワークの公開性が追跡の手掛かりになり得る構図が改めて浮き彫りになった。

一方、イランのビットコイン採掘能力を示す指標には足元で変化が出ている。報道によると、直近四半期にイランのビットコインのハッシュレートは約7EH/s低下し、2EH/s程度まで落ち込んだ。

ただ、世界全体のビットコインネットワークは総ハッシュレートがおおむね1000EH/s前後で推移しており、比較的安定している。アラブ首長国連邦(UAE)やオマーンなど周辺国への影響拡大も確認されていない。

市場では今後、イランが実際に海上輸送関連費用の徴収に暗号資産を用いるのか、各国の制裁当局が関連ウォレットや換金ルートをどこまで追跡できるのかが焦点となる。Chainalysisの警告は、暗号資産が制裁回避に使われる可能性だけでなく、取引の痕跡が残ることで海運会社の法務・実務負担が増す恐れも示している。

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