Fasooは社名を「FasooAI」に変更し、セキュリティに続く成長の柱として企業向けAI事業を本格的に強化する方針を打ち出した。小型言語モデル(sLLM)「Ellm」を中核に、知識グラフやRAG(検索拡張生成)、AIエージェントを組み合わせ、社内文書を安全かつ効率的に活用できる基盤の構築を進める。
同社は2024年、オープンソースモデルをベースに開発したオンプレミス型のプライベートLLM「Ellm(エルム)」を投入し、AI事業に参入した。以降、導入実績は着実に積み上がっているという。
文書セキュリティ事業で蓄積してきた文書管理のノウハウとAI技術を組み合わせ、企業が社内文書を安全かつ適切に活用できるよう支援する。特定業界向けの汎用提案ではなく、業界ごとの個別業務に最適化したAIプラットフォームを提供する点を差別化要素とする。
FasooAIでAI開発を統括するCTOのユン・ギョング専務は、4月15日に開催する年次顧客カンファレンス「FDIシンポジウム2026」で、業務に密着したAI活用を支える最新技術を公開すると明らかにした。
同社のカスタムAIプラットフォーム戦略は、sLLM「Ellm」を基盤に、RAGとAIエージェント技術を組み合わせる点にある。ユン・ギョング専務は、Ellmは単なるLLMではなく、企業向けAIプラットフォームだと説明。企業が必要とするAI機能の約80%をプラットフォーム側であらかじめ実装し、残る20%を顧客ごとの環境に合わせて最適化して提供する方針を示した。
その上で、企業がAIを十分に活用するには、部門単位で具体的なアプリケーションとして実装することが重要だと指摘した。同じ業務領域でも部門ごとに求められる機能や要件が異なるため、きめ細かな最適化が必要になるという。
RAGは、LLMを活用した社内データ利用を後押しする一方で、運用面では考慮すべき点も多い。FasooAIは、この課題への対応策として知識グラフとAIエージェントに注力している。
知識グラフは、事実関係を明確な関連性とともに整理するデータベースで、LLMのハルシネーション抑制や推論精度の向上に有効だという。ユン・ギョング専務は、RAGの効果を高めるには事前に知識グラフを構築しておく必要があるとし、FDIシンポジウムでその成果を紹介すると述べた。
AIエージェントについては、RAGがデータの性質に左右されやすいのに対し、用途別に利用満足度を高めやすいと説明した。Web検索や社内検索の結果を基に、複数のエージェントが相互に検証しながら回答精度を高める技術開発に力を入れているという。
同社は、強みとするセキュリティ事業とAI事業の相乗効果も大きいとみている。ユン・ギョング専務は、同社のRAGは文書内容を深く理解する仕組みだとした上で、セキュリティポリシーをベクトルDB検索にも適用することで、文書セキュリティ上の懸念を抑えた運用が可能になると強調した。
FasooAIはEllmの投入後、公共機関や企業向けに情報検索を基盤とした業務支援に注力してきたが、足元では適用範囲が広がっている。ユン・ギョング専務は、情報検索に加え、売上見通しの分析など多様なニーズが寄せられていると明らかにした。