写真=SK Telecom、KT、LG U+

韓国の移動通信大手3社で新たなCEO体制が出そろい、AI時代の主導権を巡る競争が本格化している。KTがこのほどパク・ユニョン氏を代表に選任し、3社の経営体制が固まった。各社はそれぞれ異なる重点領域を打ち出し、市場での優位確立を急ぐ。

SK Telecomは、チョン・ジェホン代表の下で現場重視の経営と「AIフルスタック戦略」を前面に押し出す。チョン代表は26日、株主総会と取締役会を経て代表取締役に就任した。

就任後は、顧客接点の拡大を重要課題に位置付ける。選任直後の3月27日には自ら現場を訪れ、サービスの点検と顧客との対話に乗り出した。昨年のUSIMハッキング事故を受け、信頼回復が経営の最優先課題となる中、顧客の声を経営に反映する考えだ。

AI分野では、インフラからモデル、サービスまでを一体で展開するフルスタック戦略を強化する。チョン代表は株主総会後、記者団に対し、「新規事業として、フルスタック基盤のAI事業を積極的に推進している」と述べた。

構想では、データセンターを含むAIインフラ、AIモデル、各種サービスを統合的に整備し、競争力を高める。SK Telecomは政府主導の「独自ファウンデーションモデル」プロジェクトにも参加しており、第2段階評価が進む中、マルチモーダル機能を高度化した「A. K-1」を投入する。

公共分野に加え、製造業向けAIなど横展開しやすいモデルを通じて相乗効果も狙う。本業の通信では加入者基盤の回復に注力する。チョン代表は「今年の目標は加入者の純増だ。1月と2月は期待に沿う純増があった。努力を続ければ、減少基調を増加に転じさせられるのではないか」と述べた。

KTは、パク・ユニョン代表の就任を機に「通信の基盤強化」を打ち出し、事業と組織の安定化を進める。ネットワーク品質やサービス安定性といった基礎競争力の立て直しを最優先課題とし、有線・無線インフラと顧客サービス体制の再整備を急いでいる。

パク代表は1日、就任後初の公式日程として情報セキュリティとネットワーク運用の現場を視察した。通信サービスの根幹であるセキュリティとネットワーク安定性を最優先する姿勢を明確にした形だ。

社員向け書簡では、「顧客が安心できるネットワーク、安定したサービス品質、隙のない情報セキュリティはKTの存在理由だ」とした上で、「この領域ではいかなる妥協もせず、必要な投資を惜しまない」と表明した。

組織刷新も進める。パク代表は就任と同時に、CEO直轄部門のトップを大幅に入れ替えた。B2BのAX事業とAI分野では、実力重視で若手リーダーを登用した。

女性幹部の起用も進めた。オク・ギョンファIT部門長は、女性として初めて副社長に就任し、IT技術分野を統括する。役員級組織を約30%縮小するなど、組織効率の改善にも踏み込んでいる。

パク代表は「B2Cでは、単なる通信を超え、暮らしに溶け込むAIサービスへ進化する」と説明。「AIデータセンター、グローバルAX、デジタル金融プラットフォームなどの新成長領域には戦略的に投資し、中核事業として育成する」と述べた。

LG U+は、ホン・ボムシク代表の下で「安全」と「セキュリティ」を前面に打ち出す。通信セキュリティの問題が業界全体のリスクとして浮上する中、これを差別化要因に転換する狙いだ。2024年末に就任したホン代表は、一貫して事業基盤の強化を強調してきた。

足元では、AIエージェント「ixi-O」を軸に蓄積してきた音声AIの技術を、フィジカルAIなど幅広い分野へ展開する戦略も示した。ixi-Oそのものの提供に加え、AI技術スタックを外部に提供する「2トラック」方式を採用し、AIソフトウェア企業への進化も掲げている。

ホン代表は「通信とAX技術のソリューション化を主導する、AI中心のソフトウェア企業になる」と述べ、「通信周辺領域で確保した技術競争力とグローバルパートナーシップを通じて海外に進出する」とした。

一方で、安全・セキュリティを強調してきた同社にとって、加入者情報管理の不備が明らかになったことは課題として残る。LG U+は2011年から現在まで、加入者識別番号(IMSI)を付与する際に、加入者の電話番号を組み合わせる方式を採用してきた。

直ちにハッキングにつながるわけではないが、ほかの情報と組み合わされればセキュリティ上の脅威になる可能性がある。SK TelecomとKTはIMSIを乱数化しており、この懸念はないという。LG U+は13日から、全顧客を対象にUSIMの無償交換を実施する。

3社が異なる処方箋を打ち出す中、業界では「選択と集中」の競争が本格化したとの見方が出ている。各社トップの手腕が本格的に問われる局面に入ったといえそうだ。

とりわけ、今年打ち出した戦略の違いは、今後の業績に直結する可能性が高い。通信会社の役割が単なるネットワーク提供にとどまらず、AI事業へと広がる中、どの戦略が市場で高く評価されるかによって主導権が左右されるためだ。

通信業界関係者は「3社のCEOがそれぞれの色を出しながら組織を整えていく構図ははっきりしている。今年の成績表が今後2〜3年の競争構図を左右しかねない。誰がより早く成果を証明するかがカギになる」と話した。

別の関係者も「事業だけでなく組織変革も同時に進んでいる。AIと通信の間で投資のバランスをどう取るかが、今後の事業地図を左右する」と分析した。

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