Appleの50年は、広告コピーやキーノートの決まり文句、論争の中で生まれた呼称とともに刻まれてきた。写真=Reve AI

Appleの50年は、革新的な製品の歴史であると同時に、ブランドを形作った「言葉」の歴史でもある。英TechRadarは4月1日(現地時間)、Appleの歩みを象徴する11のフレーズを取り上げ、同社が製品の機能だけでなく、言葉を通じてもブランド像を築いてきたと報じた。

TechRadarによると、Appleが創業初期から一貫して前面に押し出してきたキーワードは「シンプルさ」だ。1977年のマーケティングでは「simplicity is the ultimate sophistication(単純さは究極の洗練)」を掲げ、技術偏重だった当時のPC市場との差別化を図った。

1984年のMacintosh投入時には、「The computer for the rest of us(私たちみんなのためのコンピュータ)」を打ち出した。コンピュータを専門家だけの道具ではなく、一般ユーザーのものとして広げるうえで大きな役割を果たしたという。

1997年にスティーブ・ジョブズが復帰すると、ブランド再建を象徴する言葉が登場する。「Think Different」キャンペーンは、IBMの「Think」への対抗軸としても機能し、Appleを、反骨精神を持つイノベーターとして再定義する宣言になったとされる。

あわせて示された「世界を変えられるほどクレイジーだと信じる人々」というメッセージは、その後のAppleブランドを支える中核的なストーリーになった。

2000年代半ば以降、Appleは挑戦者から市場の基準を示す存在へと立ち位置を変えていく。その変化は広告コピーにも表れた。2006年の「Get a Mac」キャンペーンでは、MacとPCを擬人化し、「I’m a Mac… and I’m a PC」というシンプルな構図で両者の違いを印象付けた。これにより、Appleはクールなブランドというイメージをさらに固めた。

iPhone時代には、短いコピーがプラットフォーム戦略を象徴した。App Store開始後の2009年の広告で前面に打ち出したのが、「There’s an app for that」だ。あらゆる課題をiPhoneで解決できるという期待を高め、スマートフォンを単なる端末ではなく、問題解決のためのプラットフォームとして位置付けるうえで重要な役割を担った。App Storeのダウンロード数は提供開始から1年で20億件を超え、エコシステム拡大を加速させた。

製品発表の演出でも、Appleは言葉の力を最大限に活用してきた。ジョブズがキーノート終盤で放つ「One more thing」は、単なる決まり文句を超え、新製品発表を劇的なイベントへと変える装置として定着した。

ジョブズが繰り返し使った「It just works」も象徴的な表現だ。特定の製品ではなく、Apple全体の体験を説明する言葉として機能し、直感的で完成度の高い使い勝手を重視する同社の哲学を端的に示した。

一方で、ひと言が危機対応を誤らせた例もある。2010年、iPhone 4の受信不良問題を巡って、持ち方によって電波感度が大きく低下するとの指摘が広がった際、Appleは「You’re holding it wrong」と応じた。この発言は、責任を利用者側に転嫁していると受け止められ、ブランドイメージに大きな打撃を与えた。

Appleはその後、iPhone 4ユーザーに無料でケースを配布し、事態の収束を図った。

2014年の「Bendgate」騒動でも似た構図がみられた。極薄設計のiPhone 6シリーズが曲がりやすいとの指摘に対し、Appleは「影響を受けた顧客はごく少数」との立場を維持しつつ、製造工程や試験内容を公開して沈静化を試みた。

ただ、その後、社内ではiPhone 6シリーズがiPhone 5sより曲がりやすいと認識していた可能性があることが明らかになり、論争はさらに広がった。

Appleを巡る熱狂と反発は、言葉そのものとしても定着した。批判的な立場から使われた「iSheep」は、Appleユーザー文化を風刺する象徴的な呼び名になった。

また、Appleが直接生み出した言葉ではないものの、エコシステム拡大に寄与した表現として「podcast」も挙げられる。「iPod」と「broadcast」を組み合わせたこの言葉を起点に、Appleは翌年、iTunesへpodcastを迅速に組み込み、その大衆化を後押しした。

TechRadarは、Appleの歴史は単なる技術革新の積み重ねではなく、どんなフレーズで記憶されるかを巡る競争でもあったと総括する。シンプルさや革新性を訴える言葉はブランドを押し上げ、論争時の発言はそのイメージを揺るがした。

そのうえで今後も、新製品や新たなプラットフォームを投入するたびに、変化をどのひと言で要約し、伝えるかがAppleの競争力を左右する要素になると指摘している。

キーワード

#Apple #マーケティング #ブランド戦略 #広告コピー #iPhone #App Store #スティーブ・ジョブズ
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.