Coupangは3月31日、セブン‐イレブン店頭で実物ギフトカードの販売を開始した。カカオトークでのオンライン販売に続いてオフラインにも販路を広げ、個人情報流出事故後の利用回復を背景に、非会員や休眠利用者の取り込みを狙う。
同社は2025年9月、カカオトークの「ギフト」機能を通じてオンラインギフトカードを投入しており、約6カ月で実店舗販売にも乗り出した。
ギフトカードは、オンライン・オフラインの店舗で購入し、商品購入に使える商品券型の無記名プリペイドカードだ。一定の金額内で商品を選べるため、贈答用途での需要が高い。
Olive YoungやDaisoなど、ギフトカードを展開する企業は、自社プラットフォームやカカオトークのギフト機能を通じてカードを販売している。Coupangも2025年下半期に自社アプリとカカオトークでオンラインギフトカードの提供を始めた。
オフラインでは、コンビニエンスストアがGoogle Playギフトカードなどを扱う主要な販売チャネルとして定着している。今回のセブン‐イレブンでの展開も、こうした既存の流通網を活用する動きと受け止められている。
Coupangは、先行して販売していたオンラインギフトカードの需要を踏まえ、実物カードの投入を決めたという。
同社によると、オンラインギフトカードは法人向け需要を通じて新たな利用者層の開拓につながった。主要企業が福利厚生やマーケティング施策向けにギフトカードを大量購入しているという。
法人向けに販売したギフトカードで利用登録が進めば、新規顧客の獲得にもつながるとみている。
業界では、今回の販路拡大を利用者離脱の抑制と回復戦略の一環とみる向きがある。ワウメンバーシップによる囲い込みに加え、ギフトカードを通じて非会員や休眠利用者、贈答需要を取り込む狙いがあるためだ。
オンライン起点だったギフトカード戦略がオフラインにも広がり、利用者回復に向けた施策の幅も広がっている。
2025年11月の個人情報流出事故後、2025年10〜12月期に落ち込んだ利用者指標は、2026年1〜3月期に入り回復の兆しを見せている。こうした局面で、ギフトカードを含む施策が購入増につながる可能性があるとの見方も出ている。
Coupangによると、2025年10〜12月期に1回以上Coupangを利用したアクティブ顧客数は2460万人だった。前四半期の2025年7〜9月期は2470万人で、10万人減少しており、同社は個人情報流出の影響もあったとみていた。
一方、IGAWorksの「Mobile Index」(Android・iOS)によると、3月9〜15日のCoupangの週間利用者数は2828万1963人だった。流出事故前の水準である2908万952人に近づいており、利用者数は回復基調にあるとの見方につながっている。
利用者が回復に向かう中、ギフトカードは非会員や休眠利用者を呼び戻す手段になる可能性がある。ワウメンバーシップの会員でなくても利用でき、アプリへの再訪や購買転換につながるためだ。
同社はギフトカードの利用先に、ビューティーサービス「R.LUX」や生鮮配送「Premium Fresh」を含めた。4月8日にはCoupang Eats専用カードも発売する予定だとしている。
ギフトカードは、補償目的の短期施策とは異なり、長期的にはCoupangプラットフォームのロックイン効果を高める手段にもなり得る。特定サービスの利用開始をきっかけに、他社サービスへ移りにくくする効果が見込めるためだ。
流出事故後は補償クーポンの付与によって既存利用者の離脱を一時的に抑えた一方、今後はギフトカードの贈答需要とオフライン販売を軸に外部利用者の取り込みを進める長期戦略という位置付けになる。
実物カードは、コンビニ来店客に対する店頭露出の効果も見込める。オンライン中心だった流入経路の多様化にもつながり、単発のプロモーションより広い接点を確保できるという。
なお、Coupangは実物ギフトカードの販売先をさらに広げることについて、現時点で追加の販路拡大は検討していないとしている。
業界関係者は「ギフトカードは贈る側も受け取る側も手軽で、特定プラットフォームのプリペイドカードを受け取ると実際の購入につながりやすい。Coupangも長期的な視点で利用者の流入経路を多様化しているようだ」と話した。