【バルセロナ(スペイン)=DigitalToday Jin-ho Lee】世界最大級のモバイル関連展示会「MWC26」が3月5日(現地時間)、4日間の日程を終えて閉幕した。今年の会場では、モバイル技術にとどまらず、AIを軸にした通信業界の事業転換が鮮明になった。中国企業の大型展示が注目を集めたほか、6G、非地上系ネットワーク(NTN)、AIデバイス、スマートグラスも主要テーマとして浮上した。
◆通信大手、AI商用化を前面に
韓国の移動通信大手3社は今回、そろって「AI企業への転換」を掲げ、具体的なサービスやプラットフォームを披露した。これまでの構想段階から一歩進み、商用化を見据えた展示が目立った。
SK telecomは、AIインフラ、モデル、サービスを一体で展開する「フルスタックAI」戦略を打ち出した。AIデータセンター、LLM、各種サービスをつなぐ構成を通じて、AI事業の競争力強化を狙う。会期中には自社AIモデル「A.X K-1」のデモも実施し、モデル性能をアピールした。
同モデルは5190億パラメータ規模で、テキストや画像など多様なデータ処理を想定して設計したという。SK telecomは、産業現場など各領域に合わせてAIモデルを最適化し、市場展開を加速する方針だ。
KTは、企業のAIトランスフォーメーション(AX)需要を取り込むプラットフォーム戦略を前面に出した。企業向けAI運用OS「Agentic Fabric」を公開し、AIエージェントを基盤に業務自動化や複数システムの統合管理を可能にするプラットフォームだと説明した。
AIネットワーク技術とクラウドインフラを組み合わせ、主に法人向けにAIサービスを拡大する考えも示した。裁判支援AIや教育プラットフォームなど、公共・企業分野での導入実績を足がかりに、B2B市場の拡大を狙う。
LG U+は、AIエージェント「ixi-O」を軸に、音声ベースのAIサービス戦略を紹介した。音声データをもとに会話の文脈を理解し、各種サービスと連携するAI通話エージェントとして位置付ける。ブースではロボットとAIエージェントを組み合わせたデモも行い、ヒューマノイドロボットが音声命令に応じて動作する様子を披露した。
同社は「フィジカルAI」時代を見据え、音声AIを基盤にソフトウエア事業を広げる方針も示した。海外事業者との協業を通じたグローバル展開も進めるとしている。
このほかSamsung Electronicsも、「Galaxy AI」戦略を前面に掲げてモバイルエコシステム拡大の方向性を示した。Galaxy S26シリーズを中心に、音声・画像ベースのAI機能やパーソナライズしたユーザー体験を訴求。AIベースの仮想化ネットワークや5G特化網ソリューションも公開し、モバイルとネットワークの両面でAI競争力を強調した。
◆中国企業が大型展示、新製品も相次ぐ
今年のMWCでは中国企業の存在感が際立った。Huaweiをはじめ、Xiaomi、Honorなどの端末メーカーに加え、China Telecomなど通信事業者の動きも目立った。
Huaweiは、AIを活用したネットワーク技術と次世代通信機器を公開した。5G-Advancedから6Gへとつながる技術ロードマップの提示も注目を集めた。約1200平方メートルの大型ブースでは、最新スマートフォン、ウェアラブル、ロボットなどのAIデバイスに加え、有線・無線の通信技術も幅広く紹介した。
知能型モバイル伝送技術や電力ソリューションを展示したB2Bエリアにも、商談を目的とした来場者が相次いだ。
XiaomiはMWC26開幕前日にグローバル発表会を開き、新型スマートフォン「Xiaomi 17」を公開した。なかでも「Xiaomi 17 Ultra」は、Leicaとの協業による高性能カメラを前面に打ち出した。電動スクーター6シリーズ、Mijiaのスマート家電フルラインアップ、電気自動車「Xiaomi SU7 Ultra」も展示した。
あわせて、電動ハイパーカーのコンセプトモデル「Xiaomi Vision Gran Turismo」も披露し、モビリティ分野への取り組みを印象付けた。
中国のスマートフォンメーカー各社は、AI機能を強化した新製品も相次いで投入した。Huaweiから分離したスマートデバイスブランドHonorは、ロボットフォンとヒューマノイドロボットのデモを実施。ロボットアーム形状の2億画素カメラをスマートフォン上部に搭載した端末が来場者の関心を集めた。
通信事業者の動きも活発だった。China Mobile、China Telecom、China Unicomの中国大手3社は、MWC主催者であるGSMAとともに「モバイルAI革新イニシアチブ」を立ち上げた。
◆6G、AIネットワーク、スマートグラスに関心
会場では、次世代ネットワークとAIによる運用高度化を巡る議論も活発だった。世界の通信機器メーカー各社は、AIを使ってネットワークを自律運用・最適化する技術を相次いで披露した。
6Gも主要テーマの一つとなった。通信事業者と機器メーカーは2030年前後の商用化を視野に研究開発を進めている。QualcommのCEO、クリスティアーノ・アモン氏は基調講演で、AI時代を支える基盤として6Gへの進化を挙げ、「6Gネットワークはコンピューティングシステムへと進化し、さまざまな産業の中核インフラになる」と述べた。
新たなAIデバイスへの関心も高かった。AI機能で撮影を自動支援するカメラ技術や、高リフレッシュレートのディスプレーを採用したAIタブレットなどが注目を集めた。なかでもスマートグラスは、利便性に加え、アップリンクトラフィックを押し上げる可能性を持つデバイスとして関心を集めた。
スマートグラスの普及が進めば、5G-Advancedや6Gなど次世代通信規格の普及を後押しする可能性がある。通信機器メーカーやGPU企業の関連ソリューション需要の拡大も見込まれる。MWC会場でもMetaやXREALのスマートグラス展示には多くの来場者が集まった。業界関係者は「スマートグラスの成否は、次世代通信規格の普及を左右する重要な変数になり得る」と話した。
衛星通信を含むNTN技術も注目を集めた。基地局の整備が難しい海上や遠隔地でも通信を可能にする技術として、商用化に向けた動きが加速している。会期中には米国とイスラエルによるイラン空爆を受け、NTNへの関心が一段と高まる場面もあった。
MWCは毎年バルセロナで開かれる世界最大級のモバイル産業展示会で、通信、AI、半導体、デバイス各社が参加する。MWC26では、AIと6Gがイベント全体を通じた中核テーマとして強く印象付けられた。