英国で、学歴や職歴より実務能力を重視する「スキルベース採用」への移行が広がっている。AIの普及で、応募者が履歴書や職務経歴書を容易に作り込めるようになり、企業側では書類だけで適性を見極めることが難しくなっているためだ。
米CNBCが9月30日(現地時間)に報じたところによると、Sapia.aiの創業者兼CEO、バーブ・ハイマン氏は、「AI時代には、従来の履歴書だけで応募者との適合性を判断するのは難しい」と指摘した。履歴書はもはや十分に機能しにくくなっているとの見方も示している。
同氏は、例えば美容師としての経歴しかなければ、書類上はコールセンター業務と無関係に見える応募者でも、共感力や傾聴力、問題解決力を評価すれば適任となる可能性があると説明した。
応募の急増も、企業の選考負担を重くしている。英国学生雇用主協会(ISE)によると、2025年の大卒採用では、求人1件当たりの応募者数が平均140人となり、過去最高を記録した。応募件数は前年から14%増加した。ISEは、採用数の減少に加え、AIを使った応募書類の作成や簡易応募の広がりが増加の背景にあるとしている。
こうした中、企業は学歴や前職よりも、実際に仕事ができるかを確かめる採用手法に軸足を移している。Michael Pageが2026年に実施した調査では、英国の組織の66%がスキルベース採用を導入した。求職者の58%は、資格や経歴を重視する従来型の求人よりも、求められるスキルが明確な求人のほうが応募しやすいと答えた。
AIは、企業が人材に求める能力そのものも変えつつある。AIを活用した意思決定支援を手掛けるTaktileのCTO、ジェームズ・ブロードヘッド氏は、「以前はエンジニアが3週間かけて作っていた試作品を、AIなら半日で最大10個作れる」と説明。そのうえで、「いま重要なのは、何が優れた成果物なのかを見極める力だ」と述べた。
Taktileでは、顧客とのコミュニケーション力に加え、内省する力、成果物をうのみにせず検証する姿勢、継続的にAIを試す能力も評価対象としている。
広告会社PMGは、新卒応募者に対し、対面での実習やチーム課題、顧客ブリーフに基づく課題解決などを課している。PMG EMEAのジョシ・クリチェフスキー社長は、「過去の経歴だけでは実際の業務遂行能力が見えにくい。だからこそ、課題に直接取り組んでもらう必要がある」と説明した。
AIの普及によって、書類中心の採用手法の限界は一段と鮮明になっている。企業の採用では、「どこで働いたか」よりも「実際に何ができるか」を見極める重要性が高まっている。