MetaとOpenAIが個人向けAIアシスタントを前面に押し出し、消費者向けAI市場の開拓に再び力を入れている。一方で、有料ユーザーの伸びは鈍く、運用コストの高さが収益化の重荷となっており、採算化の壁はなお厚い。
米TechCrunchは9月30日(現地時間)、消費者向けAI事業では、需要の拡大以上に運用コスト負担が重くなりやすい構造が中核課題になっていると報じた。
足元では、消費者向けAIへの関心が再び高まっている。Metaの個人向けAIアシスタント「Muse」とマスコット「Jolly」は想定外のヒットになったという。OpenAIが9月29日に投入した「Dots」も、個人秘書をコンセプトに掲げる。旅行や飲食店の予約、サブスクリプションの解約などを代行するInstinctは、企業価値が100億ドルと評価された。
ただ、こうしたAIエージェントを有料で使う利用者の増加ペースは緩やかだ。PNCリサーチによると、5月時点でAIサービスに料金を支払っている消費者は2.2%にとどまり、月平均支出は31ドルだった。モデル性能が大きく向上しても、有料利用者数や支出額は明確な伸びを示していないとみられている。
損益分岐点もなお遠い。仮にNetflixのように加入者3億2500万人規模を確保し、市場飽和の目安とみなしたとしても、顧客単価が34ドルなら年商は110億ドルにとどまる。これはOpenAIの運用費の3分の1にも満たない水準だという。
他の調査でも、同様の傾向が出ている。Bank of Americaは3月、AIに費用を支払う米消費者は約3%と推計し、前年から40%増えたとした。一方、9月のメンロー調査では、成人の4分の1がAIを毎日利用し、その半数が有料ユーザーだとする、より楽観的な結果も示された。
それでもTechCrunchは、AIはソーシャルネットワークやクラウドに比べて運用コストが大幅に高く、数億人規模の有料ユーザーを獲得しても黒字化が保証されるわけではないと伝えた。
こうした事情を背景に、主要AI企業の間では消費者向けから企業向けへ軸足を移す動きも出ている。Dotsも個人秘書として投入されたが、OpenAIはソフトウェアエンジニアやエージェンシークリエイター向けの活用例もあわせて示した。
MetaとInstinctは、別の収益モデルも探っている。Metaはパーソナライズド広告の基盤を持つため、収益化に対する圧力は相対的に小さい。企業市場への進出も検討している。Instinctは、エージェントが代行した購買に伴う手数料を受け取る案を進めている。
もっとも、企業向け売上なしに消費者向けAI事業を大きく伸ばすのはなお容易ではない。TechCrunchは、そこが依然として大きな課題だと指摘している。