Plitoは9月30日、AI通訳・翻訳サービスを新ブランド「Vogl(Voice of Global Languages)」に統合し、企業向けソリューション事業の拡大に乗り出すと明らかにした。個人向け機能を一体化するほか、企業向けではイベントや店舗向けサービス、オンプレミス型ソリューションを強化する。競争力の柱には、AI学習データ事業で蓄積してきた「個別最適化」を据える。
同日、ソウル市江南区のグランド・インターコンチネンタル・ソウル・パルナスで開いた「Plitoメディア・インサイト・デー」で、イ・ジョンス代表は「断片的に提供していたソリューションをつなぎ、シナジーを高めるためVoglに統合した」と説明した。個別最適化を中心に各サービスを連携させ、順次拡張していく方針も示した。
イ代表はまた、「足元ではソリューション事業がデータ事業を上回るペースで成長している」と述べ、全社売上に占めるソリューション事業の構成比が前年より高まる可能性があるとの見方を示した。
Voglは、Plitoが2023年から開発してきたAI通訳・翻訳サービスを単一ブランドに再編したもの。個人向けでは、1対1の会話通訳・翻訳に加え、ノート機能と会議機能を提供する。
ノート機能は、会話やインタビューの内容をリアルタイムで記録し、要約や検索に対応する。文脈分析に基づいて次の質問を提案する機能も備える。
会議機能はWebベースで提供し、参加者が異なる言語を使う場面でもリアルタイムの通訳・翻訳を支援する。
Voglの中核技術は個別最適化エンジンだ。利用を重ねるほど、発音や固有名詞、頻出表現、業界ごとの専門用語などを学習し、音声認識と翻訳の精度を高める。こうして蓄積した個別最適化データは、会話やノートにとどまらず、他のVoglサービスにも横断的に活用できるようにした。
イ代表は「通訳では、個人をどこまで理解できるかが重要だ」と強調した。Plitoが長年手掛けてきたデータ事業の中で磨いてきたのが個別最適化であり、Voglの競争力もデータに根差していると説明した。
企業向けでは、イベントやカンファレンス向けのリアルタイム通訳・翻訳サービス「Vogl Stage」、ホテルや店舗などに設置する「Vogl Zone」、API、オンプレミス型ソリューションを展開する。Cisco WebexにもPlitoの通訳・翻訳技術が適用されているという。
同社は特に、セキュリティ要件の厳しい企業を中心にオンプレミス事業を拡大している。顧客企業の社内サーバー上に通訳・翻訳モデルを構築し、会議や業務で発生する音声・テキストデータを外部クラウドに出さない仕組みだ。
現在は国内の大企業や各種機関向けに供給を広げており、今後はグローバル市場への展開も視野に入れる。イ代表は「最近はオンプレミスソリューションの導入が急速に広がっている」と述べ、セキュリティを維持したまま通訳モデルを構築できる枠組みを海外市場にも展開する考えを示した。
同社はソフトウェアにとどまらず、ハードウェアにも事業領域を広げる。大学の講義室など実際の利用環境で、AI通訳・翻訳を安定して提供するための専用デバイスの研究開発を進めている。
狙いは、スマートフォンで録音や通訳・翻訳を使う際に、通話や写真撮影など他の機能と競合しやすい課題を補うことにある。イ代表は「デバイス分野は2年以上前から検討してきた領域だ」と述べ、2027年にはVoglブランドを冠した多様なデバイスを投入できるとの見通しを示した。スマートグラスやイヤホンなど外部デバイスとの連携も検討しているという。
Plitoは、ソリューション事業の競争力を支えるAI学習データ事業も拡大する。データ構築の対象はテキストから始まり、音声、画像、映像へと広がってきた。足元ではフィジカルAI向け学習データにも事業領域を広げている。
フィジカルAI分野では、作業者の日常動作を一人称視点で撮影したエゴセントリック映像をクラウド方式で収集する。その後、不良映像を除外したうえで、手の動きや位置、角度などを抽出し、視覚・言語・行動(VLA)モデルの事前学習向けデータに加工する。
ロボットごとのセンサーデータを大規模に直接構築するよりも、多様な環境における人間の行動データを確保し、ロボットの基礎行動学習に活用することを優先している。
AI学習データを売買できるデータマーケットプレイスも運営している。現在は500件超のデータが登録され、このうち著作権、個人情報、所有権などの検収を通過した300~400件を公開している。実際に取引も発生しており、外部販売者の取引に伴う手数料ビジネスも拡大する計画だ。
同社の2026年上半期の連結業績は、売上高が133億ウォン、営業利益が13億ウォンだった。第2四半期は売上高81億ウォン、営業利益14億ウォンとなり、第1四半期の営業赤字から黒字転換した。
上半期のAI通訳・翻訳ソリューション売上高は24億3000万ウォンで、前年同期比175%増。イ代表は「現在の売上は想定を上回っており、純利益も予想より高い」と述べた。データ事業の売上計上が下半期に集中するため、通期では売上高、利益とも前年を上回るとの見通しを示した。