教皇レオ14世は29日(現地時間)、人工知能(AI)のリスクを軽視する姿勢を強く批判し、ドナルド・トランプ米大統領やNVIDIAのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)らの規制慎重論に警鐘を鳴らした。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanによると、教皇は「技術がもたらし得る脅威から目を背ける態度は、人類共通の未来を危うくする」と指摘し、「人間の安全をより重く受け止めるべきだ」と述べた。
背景には、ファン氏が今月初め、AIの潜在的なリスクに対応する新たな規制の導入に反対する考えを示したことがある。ファン氏は当時、「新しい法律は必要ない。新しい規制も必要ない」と発言。開発スピードと安全性は二者択一ではなく、技術進歩の加速と強固なセキュリティは両立できるとの認識を示していた。
NVIDIAは最近、監視システム「Sentry」を含むAI向けの安全ツールを発表した。ただ、教皇はこうした取り組み自体には一定の理解を示しつつも、連邦レベルの監督に反対するファン氏の姿勢について、安全確保への本気度を疑問視した。ファン氏については「制約があってはならず、政府の規制も不要だと言ってきた当人だ」と批判した。
教皇は就任当初から、AIを人類にとって重大な脅威になり得る技術と位置付けてきた。5月にはAnthropicの共同創業者クリストファー・オラ氏に言及しつつ、新たな回勅を公表。技術業界に対し、利益を超えた責任を果たすよう促した。29日にも、政治指導者やAI業界、社会団体が連携し、すでに起きている問題と今後想定されるリスクを検証すべきだと強調し、「そんなことは起きないと目を閉じるのは、責任ある態度ではない」と語った。
こうした問題意識は、主要AI企業の経営トップからも出ている。国連安全保障理事会のフォーラムでは、Anthropicのダリオ・アモデイ氏とOpenAIのサム・アルトマン氏が、制御されないAIの危険性に警戒感を示し、競合関係にある国同士であっても規制の枠組みづくりで協力する必要があると訴えた。アモデイ氏はこれに先立ち、AI開発の速度を調整すべきだとの趣旨の文章も公表している。
もっとも、ファン氏が安全性の問題そのものを否定しているわけではない。NVIDIAの最新のオープンソース安全システムを紹介した際には、「AIの社会的な潜在力は、安全性の課題を解決してこそ実現できる」と語っている。ただし、開発ペースを落とす考えは示していない。AI規制の必要性を巡り、政界、企業、公共分野の見方の違いが改めて鮮明になった形だ。
世論も割れている。スタンフォード大学の資料によると、回答者の52%がAI技術に不安を感じると答えた。一方で、AIの利点が欠点を上回るとみる割合は、2024年の55%から2025年には59%に上昇した。期待が高まる一方で、リスク認識もなお高い水準にあることを示している。
地域別では、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポールで、8割を超える回答者が今後3~5年の間にAIが生活を大きく変えると見込んだ。なかでもマレーシアは、2024年と比べて認識の変化幅が最も大きかった。
雇用への不安も根強い。Ipsosの追跡調査では、2024年から2025年にかけて、多くの労働者が今後5年でAIが自らの役割を揺るがす、あるいは消滅させる可能性があると懸念した。とりわけ米国とカナダで警戒感が強く、両国の回答者の67%、68%が、AIが雇用を失わせ、産業全体を不安定にし得るとみていた。
各国政府がAIをどの程度コントロールできるかに対する信頼感には、大きなばらつきがある。スタンフォード大学の「AI Index 2026」は、大衆の懸念が既存の監督体制への信頼にはつながっていないと指摘した。AI開発が加速するほど、どの程度の監督が必要なのか、また誰が責任を負うべきかを巡る議論は一段と活発になりそうだ。