写真=LG Uplusのコールセンターで「インソーシングAICC」を利用するオペレーター

LG Uplusは9月30日、AICC(AIコンタクトセンター)事業戦略を発表した。自社コンタクトセンターで先行導入・検証したAI技術を法人向けソリューションとして展開し、2030年までに待ち時間のない応対体制の実現を目指す。AICC事業の売上高は、2030年まで年平均50%以上の成長を計画する。

同社は同日、ソウル市クムチョン区のLGカサンデジタルセンターで記者懇談会を開き、AICC戦略と自社コールセンターへの適用成果を公表した。会場では、AIコールボットやチャットボットに加え、「AI相談アドバイザー」、応対品質評価を自動化する「AIオートQA」などの主要ソリューションを紹介した。

実際の活用例では、顧客が高齢者向けの低価格料金プランについて問い合わせると、オペレーターの画面にシニア向けプランの商品情報や回答ガイドがリアルタイムで表示される。追加割引の有無やSMS、データ容量に関する質問が続いた場合も、AIが関連する社内ポリシーを順次提示し、オペレーターはその情報を基に必要な内容を案内する。

こうした支援により、従来はオペレーターが自ら探して整理していた情報収集業務をAIが補完し、応対効率が向上した。LG Uplusによると、自社コールセンターでは平均応対時間が2024年比で16%短縮し、オペレーターにつながるまでの平均待機時間は47秒から5秒に縮んだ。

近年は、応対効率の向上や顧客体験の改善を目的に、企業によるAICC導入が広がっている。一方で、AI技術の進化が速く、多額の投資をして構築したソリューションが短期間で競争力を失う可能性がある点は導入企業の負担となっていた。既存のAICCについても、あらかじめ定めたシナリオへの依存度が高く、質問の文脈や意図を十分に反映できないという課題があった。

LG Uplusはこの課題に対し、自社コンタクトセンターを技術検証の起点に据える。全国17カ所のコールセンターで年間数千万件の問い合わせに対応しており、実際の顧客とオペレーターの反応を基に、AIの性能や安定性を継続的に点検できるという。

検証を終えた機能は、外部企業向けのB2Bソリューションとして提供する。コールセンター運営の知見を持つ専門人材が顧客企業の現場に入り、業務特性に合わせたコンサルティングを実施する。導入後に現場で上がった要件は、ソリューション改善にも反映する。

AICCの構築プロセス自体にもAIを活用する。LG Uplusは、LG AI ResearchのEXAONEに加え、グローバル大手テック企業のAIモデルも利用する。顧客企業が求める問い合わせ目的や業務指針を入力すると、AIが応対シナリオや業務手順、応対エージェントを自動生成する仕組みだ。

その後は、本番環境に近いシミュレーションで応対品質を事前に検証する。導入後は蓄積した応対データをAIが再分析し、課題の抽出と改善案の提示を行う。

実際の顧客対応では、業務の性質に応じて複数のAIソリューションを使い分ける。料金照会やサービス加入など、オペレーターを介さず処理できる問い合わせは、AIコールボットとチャットボットが担う。LG Uplusでは現在、年間約800万件の顧客問い合わせをAIコールボットとチャットボットで処理している。

AIコールボットは、特定の単語を認識するだけでなく、会話全体の文脈から顧客の意図を把握する。顧客が話の途中で間を置いた場合も、発話が終わるまで待って処理状況を案内するなど、より自然な対話体験の提供に重点を置く。

オペレーターにつながった後は、「AI相談アドバイザー」が対応を支援する。顧客とオペレーターの会話をリアルタイムでテキスト化し、文脈を分析して必要な商品情報、社内ポリシー、回答ガイドをオペレーター画面に提示する。

これにより、オペレーターは社内システムを行き来しながら情報を探す時間を減らし、顧客の状況や感情、追加要望の把握に集中できる。経験の浅いオペレーターでも、AIが示した情報を基に必要な回答を素早く確認でき、熟練度による応対品質のばらつきも抑えられるとしている。

応対終了後は、「AIオートQA」が品質を分析する。AIが内容を解析し、オペレーターごとの強みや改善点を提示する仕組みだ。従来は応対コーチが録音を直接聞いて一部の応対のみを評価していたが、AIの活用により、より多くの応対を同一基準で分析できるようになった。コーチは反復的なモニタリングに代えて、オペレーターごとの特性分析や課題整理、個別最適化したコーチングに注力できる。

LG Uplusは、これらのAICC技術を自社コールセンターに適用した結果、オペレーター接続までの平均待機時間が2024年の47秒から2026年は5秒へと約90%減少したと説明した。平均応対時間も同期間に16%短縮した。

AI導入で生まれた余力は、顧客別のきめ細かなサービス強化に振り向ける。65歳以上の高齢顧客にはオペレーターが優先対応し、聴覚障害のある顧客には手話オペレーターを接続する。AIによる応対を望まない顧客には、従来方式を選べるようにした。

今後は、顧客対応の全プロセスをAI中心で運営する「AIネイティブ・コンタクトセンター」としてAICCを高度化する方針だ。顧客が問い合わせる前の段階から、過去の応対履歴や加入情報などをAIが分析して意図を把握し、必要な情報を先回りして提示する体制を構築する。

最終的には、オペレーター接続を待つ時間そのものをなくす「待ち時間のない応対」の実現を目指す。同時に、コールセンターで発生する応対データをリアルタイムで分析し、改善点をサービスに再反映することで、自律的に高度化するAICC体制の構築も進める。

LG UplusでEnterprise AI事業グループ長を務めるアン・ヒョンギュン常務は、「自社コールセンター運営で蓄積した経験とインソーシングの競争力を基に、企業顧客のAI転換を支援する。2030年までにAICC事業を企業AX事業の中核成長軸に育てる」と述べた。

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