写真=Shutterstock。ジェンスン・フアン氏はAI蒸留について「窃取ではなく競争」との認識を示した

NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は28日、他社の人工知能(AI)モデルの出力を活用して新たなモデルを学習させる「蒸留」について、「競争」との見方を示した。中国企業による同手法の活用を「窃取」と位置付ける米当局との温度差が浮き彫りになった。

米CNBCによると、米中のAI主導権争いの中で蒸留が主要な争点として浮上する中、フアン氏はインタビューでこうした考えを語った。

蒸留は、性能の高いモデルの出力を使って、より小型または性能の低いモデルを訓練する手法を指す。米当局はこれまで、中国のAI企業が米国製AIモデルの機能や性能を取り込む目的で、この手法を利用していると指摘してきた。

スコット・ベッセント米財務長官は7月、蒸留を「窃取」と表現し、米国で開発されたモデルの能力を抜き取る海外企業に対して制裁を科す可能性があると警告していた。

これに対し、フアン氏は蒸留を競争の一環とみる。CNBCのインタビューで「強盗行為ではないのか」と問われると、「私はそれを競争と呼ぶ」と答えた。

さらに、「他社製品はいくらでも試すことができる」と述べ、NVIDIAの製品についても、企業が仕組みを理解するために徹底的に分析していると説明した。

その上で、自社としても競合に学習目的で製品を使われたいわけではないとしつつ、「そうしてほしくはないが、競争はあらゆるものをより良くする」と語った。

また、「誰かに自社製品を使われたくないなら、顧客を把握し、サービスを止めればいい」とも述べた。蒸留そのものを一律に違法とみなすのではなく、提供側が利用者管理やアクセス制限で対応できるとの認識を示した格好だ。

一方、米政府は蒸留を巡って強硬姿勢を崩していない。米国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は今月初め、国家安全保障局(NSA)と連邦捜査局(FBI)と共同で、中国系AI企業が米AI企業のモデルから機能や能力を抜き取るため、産業規模で知識蒸留を展開していると警告した。

名指しされたのは、DeepSeek、Moonshot AI、Alibaba、MiniMax、StepFun、Z.AIなど。

CISAは、蒸留自体はAI研究で広く使われる正当な技術だとした上で、競合モデルの能力を取り込む目的で悪用されれば問題になり得ると説明した。中国系企業が米AI企業の利用規約に違反し、大規模にモデルの機能や性能を抜き取ったとも指摘している。

民間でも同様の見方が出ている。Anthropicは9月に公表した脅威インテリジェンス報告書で、AlibabaやDeepSeekなどの中国系AI企業が、「Claude」の能力を引き出して自社モデル開発に利用する違法な蒸留活動を行ったと明らかにした。

これに対し、中国側は米国の主張を否定している。中国商務部は、蒸留を巡る米国の主張には根拠がなく、正当な技術・商業上の問題を政治問題化していると反論した。

AI蒸留を巡る論争は、単なる技術活用の是非にとどまらず、利用規約違反の有無やAIモデルの能力保護、対中技術規制の問題へと広がっている。同じ手法を巡っても、フアン氏は競争とみなす一方、米当局は中国系企業による一部の行為を産業規模の能力流出と捉えており、隔たりはなお大きい。

キーワード

#NVIDIA #AI #蒸留 #CISA #NSA #FBI #Anthropic
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.