写真=SpaceX

SpaceXは28日、Starshipを初めて軌道に投入し、次世代の「Starlink V3」衛星26機を展開した。Starshipが商用衛星を実際の軌道上に投入したのは今回が初めて。一方で、飛行中にエンジン異常が発生し、任務は当初計画を下回る約3時間で終了した。

複数の海外メディアによると、今回の14回目の飛行試験で、Starshipは初の軌道投入と商用衛星の展開に成功した。ただ、機体の不具合により、当初予定していた飛行プロファイルは完遂できなかった。

Starshipは米テキサス州のStarbaseから打ち上げられた。上昇中にブースター「Super Heavy」のRaptorエンジン1基が予定より早く停止し、その後、上段のStarshipでもRaptorエンジン1基が早期停止した。

SpaceXは、残るエンジンの燃焼時間を延ばして飛行を継続した。飛行管制チームが機体の状態を確認した後、軌道投入のための燃焼を行った。

その結果、Starshipは高度約276kmの低軌道に到達し、Starlink V3衛星26機を順次展開した。当初は約10時間飛行し、約6周回する計画だったが、エンジンの問題を受けて任務は約3時間で打ち切られた。

その後、機体は太平洋上空で再突入し、ハワイ北方の予定海域に着水した。SpaceXはXへの投稿で着水を確認し、初の軌道飛行成功を報告した。

今回の飛行では、Starlink V3の初の商用展開も実施された。Starlink V3はFalcon 9に搭載できないほど大型で、各衛星の重量は打ち上げ時点で約2tとされる。

SpaceXによると、Starlink V3衛星1機は、Starlinkネットワーク向けに下り1Tbps、上り160Gbpsの容量を提供できるよう設計されている。今回展開した26機ベースでは、最大26Tbpsのネットワーク容量を追加できる計算になる。

この容量は、Falcon 9で打ち上げる既存衛星と比べて約10倍に当たるという。

Starlink V3は、発電能力を高めた太陽光パネルと改良型アンテナを搭載し、ネットワーク性能の向上を図る。端末への直接接続サービスにも活用可能で、将来的には米政府向けの「Starshield」サービスに使われる可能性もある。

SpaceXは、衛星分離後に26機すべてとの通信を確立したと発表した。

今回の軌道投入は、今後のStarlink V3展開拡大や、宇宙空間での燃料補給試験に向けた基盤となる。7月のStarship飛行でもStarlink V3衛星は打ち上げられたが、当時は軌道投入に至らず、衛星は大気圏再突入で失われていた。

今回の飛行により、StarshipはV3衛星を実際の軌道上に展開できることを示した形だ。

Starlinkはすでに、消費者向け衛星ブロードバンド市場で大きな存在感を持つ。Ooklaの調査では、2025年7~9月期の世界の衛星通信スピードテスト標本の97.1%をStarlinkが占め、Viasatは1.7%だった。

もっとも、この数値は加入者ベースの市場シェアではなく、速度テスト標本ベースの比率だ。SpaceXは、Starlinkの加入者数が2026年3月31日時点で約1030万人に達したとしている。

ただ、今回の飛行で実証されたのは、Starshipが大型衛星を軌道上に展開できる点までで、十分な打ち上げ頻度を維持できるかどうかは今後の課題として残る。SpaceXは今後、打ち上げ回数を増やすとともに、飛行時間の延長や宇宙での燃料補給試験を進める計画だ。

宇宙産業全体も拡大が続いている。2025年の世界の宇宙経済の売上高は約6260億ドルと推計され、このうち約78%を商業活動が占めた。

経済協力開発機構(OECD)は、宇宙インフラへの依存が高まるなか、市場集中によって戦略的な脆弱性が生じる可能性があると警告している。

低軌道ブロードバンドの経済効果も大きいと見込まれる。Oxford Economicsは、政策、利用料金の負担しやすさ、競争環境などの条件次第で、2035年の低軌道ブロードバンド利用者は7800万人から4億2100万人に達する可能性があると分析した。

世界の国内総生産(GDP)に対しては、320億ドルから8630億ドルを上積みする可能性があるとしている。

SpaceXは今後、Starshipの打ち上げ頻度を高めながら、Starlink V3衛星の展開拡大を進める方針だ。長期的には、Starshipによる長時間の軌道飛行や宇宙空間での燃料補給試験を重ね、これを基に米航空宇宙局(NASA)のArtemis計画における月面着陸ミッションに必要な技術確保を目指す。

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