AI監視カメラによる人物検出を妨げる「デジタル迷彩シャツ」が登場した。ベルリンを拠点とするアーティスト、サイモン・ヴェッカート氏は9月27日、オープンソースの物体検出モデル「YOLO」による検出を意識した柄のシャツを発表した。AI監視を完全に回避するための製品ではなく、監視技術の限界や運用の不透明さを可視化する試みだとしている。
同氏が公開した動画では、通常は人物を「PERSON」と表示するYOLOのシステムが、このシャツを着た人物を人物として検出できなかった。カメラの前に人が立っていても、人物クラスとして識別されなかったという。
ヴェッカート氏はあわせて、ベルリンの公共監視環境にも言及した。公共空間を撮影する監視カメラがあり、AIが歩行者の行動を「正常」と「不審」に分類していると説明する一方、そうした監視カメラが実際にYOLOを使っているかどうかは確認されていないとした。
同氏は、問題はこうした監視の実態が見えにくい点にあると指摘する。このシャツについても、警察の目を逃れるための道具でも、匿名性を保証する手段でもないと強調した。どのような柄であっても、あらゆる状況で全てのシステムを回避できるわけではなく、この迷彩も例外ではないとしている。
その上で、公共の場でこのシャツを着ること自体に意味があると訴える。誰もが機械に読み取られることを望んでいるわけではない、という意思表示になるためだ。このシャツは、AI監視を完全に逃れる技術というより、物体検出モデルの脆弱性と監視システムの不透明さを可視化するための作品という位置付けに近い。
ヴェッカート氏はこれまでも、デジタル監視社会を問い直す作品を手がけてきた。過去には、スマートフォンを大量に積んだ手押し車を引いて道路を移動し、Googleマップ上で渋滞が発生したように見せる実験でも知られる。
シャツの販売価格は約10万ウォン。新しいYOLOが登場するたびに、デザインも更新していく予定だという。