写真=クリス・パトリック氏(Qualcomm上級副社長兼モバイル・ハンドセット部門長)

【マウイ(米国)】Qualcommは、「Snapdragon 8 Elite Extreme」第6世代でパッケージ構造を刷新し、メモリを片側にずらして配置する「オフセットPoP」を採用した。SoCから冷却機構へ熱を逃がしやすくする新たな放熱経路を設けることで、最上位スマートフォンでピーク性能をより長く維持する狙いだ。

クリス・パトリック上級副社長兼モバイル・ハンドセット部門長は23日(現地時間)、米ハワイ州マウイで開かれた「Snapdragon Summit 2026」のモバイル向けラウンドテーブルで、「熱を効果的に逃がしてSoCを冷却できれば、最大性能を発揮できる時間を延ばせる」と述べた。

こうした設計変更の背景には、スマートフォン市場の高価格帯シフトがある。パトリック氏は、メモリコストが上昇する局面でも、実質的にすべての地域でプレミアム端末の構成比が高まっていると説明した。Qualcommはこれに対応し、単一のプラットフォームでプレミアム機全体をカバーする体制から、2つのフラッグシップ・プラットフォームを投入するマルチフラッグシップ戦略へ転換したという。

その結果、最上位モデルでは高負荷時の性能持続性をいっそう重視する必要が生じた。Qualcommは過去約10年にわたり、8シリーズでSoCの上にメモリを積層するPoP(Package on Package)を採用してきた。この構造では、LPDDR5やLPDDR6の配線をメインボード経由ではなく、パッケージ内で処理できる。

今回公開した「Snapdragon 8 Elite Extreme」第6世代では、このパッケージ構造自体を見直した。パッケージを大型化したうえで、メモリを片側にオフセット配置するオフセットPoPを採用。メモリをずらして確保したダイ上の空間に熱伝導材を配置し、スマートフォンの冷却機構へ熱抵抗の低い放熱経路を設けた。

Qualcommによると、この経路を通じてCPUやGPUなどダイの一部温度を下げることで、システム全体として高い性能を維持しやすくなる。パトリック氏は「レーシングエンジンのように、通常時は極めて少ない電力で動作し、必要なときに非常に高いピーク性能を発揮するチップだ」と説明。「その最大性能をより長く維持できれば、システム応答が速くなり、体感もより滑らかになる」と語った。

オフセットPoPを採用するスマートフォンメーカー側では、冷却設計の一部見直しが必要になる。熱がメインボード側とメモリ上方の双方に逃げるため、放熱経路が実質的に2系統になるからだ。もっともパトリック氏は、「まったく新しい技術が必要になるわけではなく、システム設計が少し変わる程度だ」と述べた。

◆Samsung Electronicsとの協業継続に期待

2つのプラットフォームでは、Adrenoの高性能メモリ(HPM)容量にも差を設けた。「8 Elite Extreme」第6世代は18MB、「8 Elite」第6世代は12MBとなる。パトリック氏は、ゲーム開発業界がHPMをゲーム中核機能のローカルキャッシュとして活用していると説明した。なお、「8 Elite Extreme」第6世代のGPUにはマトリクス加速機能も搭載する。

CPUについては、最大性能の引き上げ要因としてマイクロアーキテクチャの改善を挙げた。Oryon CPUのプライムコアが最大5GHzに達する点については、2ナノプロセス移行の効果との見方もあるが、パトリック氏は「世代間で大きな改善があったのはマイクロアーキテクチャだ」と説明した。具体例として、新たなキャッシュ構造「Flex Cache」、SMEエンジン、コア間コヒーレンシー・インターフェースを挙げた。

Qualcommは、次世代パッケージ方式の検討も進めている。パトリック氏は、メモリをダイの横に配置する方式も可能だとしつつ、その場合はスマートフォン内部のレイアウトが変わり、バッテリーやカメラの搭載スペースに影響する可能性があると指摘した。これに対し、オフセットPoPは面積増が比較的小さく、バッテリー向けの空間も確保しやすいという。

同氏は「PoPとオフセットPoPの組み合わせが、長期的には有力な解になり得る」と述べる一方、「他の方式についても引き続き検討していく」として、将来的な方式変更の可能性も否定しなかった。

「Snapdragon 8 Elite」「Snapdragon 8 Elite Extreme」の第6世代プラットフォームは、グローバルOEM各社のフラッグシップ端末に採用される予定だ。Samsung Electronicsでの採用について、パトリック氏は「顧客企業に代わって話すことはしない」と明言を避けた一方で、「今回のプラットフォームでも一緒に取り組めることを期待している」と述べた。さらに「モバイル業界における世界最強のパートナーだ」と付け加えた。

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