AIで業務を効率化しても、その成果を社内に共有しない社員が少なくない。写真=Shutterstock

AIで業務時間を短縮しても、その成果を会社に明かさない社員が増えている。効率化によって生まれた余力が追加業務に吸収される一方、昇進や賃上げにはつながりにくいとの受け止めが広がっており、AI時代の「静かな退職」とも言える動きが浮かび上がってきた。

例えば、日本のエンターテインメント企業で広報・マーケティングを担当する20代社員は、会社が利用を認めたAIを使って要約や資料作成などの業務フローを自動化した。月に約10時間を削減できたものの、そのことは上司や同僚に伝えていないという。

効率化を明かしても、任される仕事が増えるか、知見の共有を求められるだけで、昇進や賃上げに結び付く可能性は低いと判断したためだ。

こうした傾向は海外調査でも確認されている。IT企業のIvantiが2025年に世界のオフィスワーカー6000人超を対象に実施した調査によると、業務でAIを使っている人の32%が、AIによる生産性の向上を会社に伏せていると回答した。

理由として最も多かったのは「自分だけの競争上の優位を保ちたい」で36%だった。「人員削減への懸念」も30%に上った。

さらに、オフィスワーカー全体の52%が「より効率的に働けば、会社はさらに多くの仕事を与える」に同意した。AIで生まれた余力が、余暇や報酬として本人に返ってこないのではないかという不信感が根底にある。

日本でも似た構図が見える。パーソル総合研究所によると、AIで節約できた時間の61.2%は、別の業務に充てられていた。

また、AIの活用や同僚への支援が正式な業務として扱われず、人事評価にも反映されていないと感じた人は32.5%に達した。AI活用を評価や処遇に反映している企業は12%にとどまった。

企業がAIの利用量そのものではなく、生産性向上や知識共有を評価や報酬に結び付ける仕組みを整えなければ、効率化の成果を社内に隠す動きは今後も続く可能性が高い。

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