Broadcomは、AIモデル開発の減速観測が広がる中でも、AI半導体の長期売上目標を維持する方針を示した。ホック・タンCEOは、学習向け投資の先行きに不透明感があっても、製品やサービスでAIを動かす推論需要は引き続き強いとの見方を示した。
CNBCによると、タンCEOは14日(現地時間)、AIモデル開発ペースの鈍化が同社の業績見通しを左右することはないと明言した。
背景には、週末にAnthropicのダリオ・アモデイCEOが、高性能AIモデルの開発ペースを緩めるべきだとの趣旨の文章を公表したことがある。この文章はサム・アルトマン氏やイーロン・マスク氏の支持を受け、市場ではAIインフラ需要の先行きを見直す動きが広がった。
これを受けてBroadcom株は4.8%下落。半導体セクター全体も軟調で、iShares Semiconductor ETFは5.6%安となり、データセンター関連部品メーカーの株価もそろって下げた。
ただ、Broadcomは従来見通しを据え置いた。ジム・クレイマー氏が、AI開発を巡る減速論が2027年度と2028年度のAI半導体売上見通しの見直しにつながったのかと尋ねると、タンCEOは「全くない」と答えた。
タンCEOは、AI開発向けインフラ需要に加え、学習済みモデルを実際の製品やサービスで動かす推論需要も強く、持続性が高いと説明した。
Broadcomは9月2日に発表した2026年度第3四半期決算で、2027年度のAI半導体売上を1150億ドル(約17兆2500億円)と見込み、2028年度には2300億ドル(約34兆5000億円)に倍増するとの見通しを示していた。
この見通しは市場予想を上回る水準として受け止められている。BroadcomのAI売上には、カスタムAIアクセラレーターとAIシステム向けネットワークチップが含まれる。
市場の反応が大きかったのは、BroadcomにとってAnthropicが主要なカスタムチップ顧客だからだ。タンCEOは、Anthropicが2027年にBroadcomのカスタムチップ最大顧客となり、2028年もその地位を維持するとしている。
これまでBroadcomの最大顧客候補として取り沙汰されてきたのはGoogleだ。Googleは自社のTensor Processing Unit(TPU)の設計でBroadcomと協力してきた。
タンCEOは特に推論需要を重視した。「学習は分からないが、推論を製品化する需要は非常に強く続くだろう」と述べた。
AIモデルの学習投資が一部で調整されても、実サービスへの組み込み段階での需要は落ち込みにくいとの認識を示した形だ。
一方で、BroadcomはAI規制の必要性そのものを否定したわけではない。タンCEOは、AIに一定の制限が必要だとするアモデイCEOの問題意識には同意しつつ、技術が制御不能になるとの見方には距離を置いた。
タンCEOは「どのような道具でも、使い方にはガバナンスと安全装置が重要だ」とした上で、「自ら暴れ回る生きた動物ではない」と語った。
Broadcom経営陣は、AIの経済的な効用についても強調した。タンCEOは「生成AIとフロンティアモデルの開発は莫大な価値を生む」と述べ、最終的には社会や人類の生活水準を引き上げる道具になるとの見方を示した。
今後の焦点は、AI学習投資の減速懸念が実際に設備投資の縮小につながるのか、それともBroadcomが強調する推論需要がそれを補うのかに移る。Broadcomは当面、長期売上目標を変更しない姿勢を鮮明にしている。