Strikeのジャック・マラーズ最高経営責任者(CEO)は14日、ビットコイン(BTC)と人工知能(AI)が、不安定な通貨システムや反復労働によって失われる人間の時間を取り戻す手段になり得るとの考えを示した。発言の背景には、足元で進むビットコイン高や、米国の財政悪化、ドル安、インフレ懸念といったマクロ環境がある。
Bitcoin Magazineによると、マラーズ氏は同日、同誌のテレビ番組に出演し、「悪い貨幣システム」が生む非効率と反復労働を、ビットコインとAIが軽減できると語った。
同氏は、貨幣を人間の時間とエネルギーを映すものだと定義した。貨幣は個人の努力や労働を反映するものであり、通貨の質は生活に直接影響すると強調。通貨価値が不安定になるほど、人はより長い時間、より多くの労働を投じざるを得なくなる構造が生まれると指摘した。
その結果、住宅取得や休暇、芸術的な関心の追求といった活動に必要な余力を確保するためにも、さらに働かなければならなくなると説明した。一方、健全な貨幣システムは、投入した時間とエネルギーに見合う価値を保ち、個人に時間を返すことができると述べた。
マラーズ氏は、ビットコインとAIがこうした構造的な負担を和らげる役割を担うとの見方を示した。
例として挙げたのが、米国の発明家であるライト兄弟だ。米国が金本位制を維持していた時期に飛行機を発明した点に触れ、安定した通貨が創造的活動の土台になり得ると論じた。
こうした発言は、ビットコインの上昇局面で飛び出した。ビットコインは8月に約25%上昇し、2026年で最も高い月間上昇率を記録した。8月としてプラスで終えたのは2021年以降で初めてという。8月末時点の価格は約7万8000ドル(約1170万円)だった。
市場では、米財務省による長期国債のバイバック拡大が上昇要因の一つとして挙がっている。スコット・ベセント財務長官が拡大を決めた後、国債利回りが低下し、その過程で数十億ドル規模のショートポジションが清算されたとされる。
その後、金やビットコインなど、通貨価値の下落に備える資産への関心が再び強まった。
ドル安も相場を支えた。財務省のバイバック発表に近い時期、米国の国家債務が40兆ドル(約6000兆円)に達したと報じられ、ドルの価値低下が意識された。
マラーズ氏は米国の財政状況にも強い懸念を示した。現在の国家債務は持続可能ではないとし、利上げでも利下げでも根本的な問題解決は難しいと主張した。いずれの場合もインフレを招く可能性があり、持続可能ではないと説明した。
インフレ圧力も市場の変数として残る。12日に公表された米国の8月コア消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%上昇し、市場予想を上回った。
食品とエネルギーを除くコア物価の伸びが想定を超えたことで、市場ではインフレ圧力がなお根強いとの受け止めが広がった。
こうしたマクロ環境の下、ビットコインは単なるリスク資産の枠を超え、通貨価値下落への備えとして改めて注目を集めている。米国の財政負担、ドル安、インフレ懸念が同時に意識されるなか、価値保存手段としてみる向きも強まっている。
マラーズ氏は、ビットコインとAIを単なる技術楽観論としてではなく、「人間の時間」という観点から位置付けた。不健全な通貨が個人の時間とエネルギーの消耗を増やすのであれば、健全な通貨と自動化技術は不要な労働を減らし、その時間を創造的な活動へ振り向けられるという理屈だ。
同氏のメッセージは、ビットコインの価格見通しにとどまらない。貨幣と技術が労働と時間にどのような影響を及ぼすのかを、改めて問い直す問題提起といえる。
ビットコイン相場が米国の債務拡大、ドル安、インフレ懸念といったマクロ要因に左右される状況が続くなか、市場では今後も金融政策との連動性に注目が集まりそうだ。