ベテラントレーダーのピーター・ブラント氏が、暗号資産市場に参加する個人投資家に対し、チャートやテクニカル指標に偏った売買姿勢へ警鐘を鳴らした。相場の本質は短期的な値動きではなく、市場を実際に動かす資金と参加者の構造にあるとの見方を示している。
ブロックチェーンメディアのU.Todayによると、ブラント氏は14日、X(旧Twitter)への投稿で、市場投機は価格や取引時間、証拠金、チャート、政府の報告書だけで理解できるものではないと指摘した。
同氏は、個人トレーダーが相場形成において本質的ではない要素に過度に目を向けているとみている。市場は「多数から少数へ富が再分配される構造」だとし、大きな資金を動かす少数の参加者が相場の流れを主導するとの認識を示した。
その上で、相場の中核は「上階のプライベートなポーカールーム」で動いていると表現した。機関投資家や大口の商業参加者、報告対象となる投機筋などを指す比喩とみられる。
一方、個人投資家の影響力は限定的だとの見方も示した。先物を1回に5~20枚程度売買するような参加者は、相場全体から見ればほとんど数に入らないとし、「私たちは取るに足らない存在で、宇宙から見ればアリのようなものだ」と述べた。
ブラント氏が問題視したのは、個人投資家が損失の原因を捉える視点だ。多くの参加者は、損失を売買判断のミスや政府の報告書、取引戦略のせいにする一方で、市場構造そのものを見ようとしないという。
暗号資産市場でも事情は同じだとする。個人投資家が短期的な価格変動やテクニカルシグナル、その時々の相場テーマに気を取られている間に、実際に資金を動かす参加者の行動や市場の構造を見落としがちだと説明した。
こうした構造を理解しないまま投機に踏み込めば、成功の可能性はきわめて低いとも警告した。平均的な投機参加者がこの現実を理解していないことが、1000人に3人も成功しない理由だと述べている。
また、X上では「手数料を払うシミュレーション取引」で得た仮想利益を誇示する投稿も見かけるとし、そうした行為を詐欺的だと批判した。個人投機家は、株式や商品市場の取引が「巨大なコンピュータゲーム」にすぎないと、できるだけ早く理解したほうがよいと改めて強調した。
一方で、優良企業を長期保有することは投資だとし、58年間連れ添った妻との結婚や無借金でいることも一種の投資だと自身の考えを紹介した。さらに、これはあくまで個人的見解だとした上で、資金の使い方にかかわらず、キリストに心身を委ねたことが自身にとって究極の投資だったとも付け加えた。
ブラント氏の発言は、主要なマクロイベントを控えたタイミングで出た。市場では今週予定される米連邦準備制度理事会(Fed)の政策金利決定、ジェローム・パウエル議長の記者会見、ドット・プロットの公表に注目が集まっている。
英国中央銀行と日本銀行もそれぞれ金融政策の決定を控えており、世界の金融市場でボラティリティーが高まる可能性も意識されている。
規制環境の変化も市場の関心事だ。米証券取引委員会(SEC)は3月、暗号資産に関する解釈ガイダンスを公表し、主要な暗号資産を「デジタル商品」に分類した。市場参加者は、金融政策と規制の変化が同時進行するなかで、ポジション調整を進めている。
ビットコインは14日、序盤こそ方向感を欠いたものの、日次では上昇基調を示した。ただ、3日に付けた高値8万2283ドルはなお回復していない。8月に6万4000ドル台からショートスクイーズをきっかけに急反発した後は、上昇分の一部を打ち消し、調整局面で推移している。
足元では金融政策と規制の両面で不透明感がくすぶる。そうした局面だからこそ、ブラント氏の発言は、目先のチャートや相場観に振り回されるのではなく、相場を動かす資金と参加者の構造を先に理解すべきだとのメッセージとして受け止められそうだ。